なにしろ正味2日間で4ダイブだ。夜中のホテルフロントにはダイビングショップより「7時半集合」のメモが残されていた。
さっさと寝なくてはいけない。
宿泊ホテルであるホリデイインサイパンはさすが29800円のツアーに使われるだけある湿ったかんじのエレベーター無しで、ある意味私好みだった。 そして部屋チェックしている時に、私は自分のマヌケ加減に気がついた。
「しまった〜!しばらくこういうとこ泊ってないからシャンプー&リンス、歯ブラシ用意し忘れた〜!!」
そう、こういうホテルにそんな消耗品の備え付けなどないのだ。 7時半集合ということは、明日の朝は・・・指で歯磨きか(笑)
翌朝、予定通りSちゃんの歯磨き粉を分けていただき指で歯磨きをし、円をドルに換えるべくホテルフロントへ行った。
しか〜し!
「ノ〜、チェンジ、ノ〜」
ってお姉さんが肩をすくめる。そういや両替表示ないよ。がちょ〜ん。
どうやら、道路一本向こうの免税店で両替するしかないらしいがオープンは9時過ぎ。 いきなり「イチモンナシ」状態決定。 一体、何度目の海外だというのだ、2人とも!
まあ、そんなことはあったがこのホテルの良いところは隣がダイビングショップというところだ。
逃げも隠れもできない我々に、ダイビングショップのお姉さん(日本人)が20ドル紙幣を1枚貸してくれた。 これで夜まで両替できなくても昼ご飯は食べれるだろう、と。
そんな親切に甘えながら、私とSちゃん、女子大生2人、男子1人、インストラクター2人の総勢7名はダイビングポイントであるラウラウビーチへ向かった。
ここに至るまで触れていなかったが、実は
目覚めた時からけっこうな雨量だった。
サイパンのようなところは、スコールはあっても本格的に雨ということは少ない。ましてや台風シーズンでもなんでもないというのに、インストラクターが「こんなことはめったにないんだよね」というすばらしい気候だった。

詳しくはないが、雨というのはダイビングにあまり影響ないらしい。雨の次の日は水が濁ることもあるようだが、当日の雨そのものは影響ないというのだ。 ただ風はマズイ。 波が出るから。
そして、この日はヤシの木が揺れていた・・・
ラウラウビーチは岩場が遠浅に続き、急に深くなっている。 ずっとロープが張ってあるので、器材を背負ってフィンだけ脱いだ状態で岩場を歩き、深くなる直前でフィンを履いてロープ伝いに潜るのだ。
波が荒いのでフィンを履くのも流されそうになったり転びそうになったりで一苦労だった。いつもは潜るまでに決心が鈍る私も、もう何だかわからないうちに即潜行。
そして潜ってしまえば、そこはもう楽園なのだ。
うおぉぉぉぉ!熱帯魚じゃ〜!
体験ダイビングやシュノーケリングとは一味違う、ましてや北海道の海とは3味くらい違うサイパンの初ファンダイブ。
ああ、浦島太郎気分、である(←一般的比喩と違うけど)
イソギンチャクにも触ることができて満足。小さい吸盤に吸い付かれるような変わった感触だった。
こんな竜宮城体験も、海面に出たとたんものすごい疲労にチェンジする。 やっぱりダイビングは浦島太郎だ。
潜る前の倍くらい重く感じる機材を背負って浅瀬をヨロヨロと歩くのは辛い。
しかし、その体に鞭打って、休憩後にもう一本潜った上、午後もやることに決める。
・・・1日3ダイブか〜 明日大丈夫かなぁ なんて不安もちょっとあるにはあったが。
昼食はショップに戻ってホテル横のレストランだったので、昼休みを利用して私とSちゃんは免税店まで行って両替してきた。 あまり時間がなかったので私のシャンプーやら何やらの買い物は後回し。とにかく両替。
ブランド品なんかも並ぶ免税店でリゾートなりにまともな格好をしている客層の中、あきらかに海から上がりたての水着の上から短パンTシャツの2人づれというのは気がひけた。
「あ、このバック可愛い」とかキョロキョロしているSちゃんに「後で買えば?」と冷たく言って早足になる私は、ブランドに興味がないだけではなくかなりな小心者だ。
無事にドルを入手した我々は、早々にショップのお姉さんに20ドルを返し、午後のダイビングに出発した。
午後のポイントはグロットと呼ばれるところで壷状の岩棚とでも言うべきだろうか? 崖下の海に潜るのだが、潜行場所は崖に囲まれた海の中洲のように突き出た岩。外海側の岩棚には海中部分に空洞があり、潜行後にそこから外海へ出るのだ。
という場所ゆえに、まず崖下に下りなくてはならない。 いきなり試練が待っていた――――階段だ。
おのれは紀三井寺か!と突っ込みたくなるような百数段あるという階段は一段一段の幅も狭く、何Kgもある器材を背負って降りるのはキツイ。 落ちたら絶対死ぬなぁ・・・というだけではなく、帰り辛そう〜という未来の辛さまで感じちゃったりでロクなものではない。
更に階段を降りたら降りたで、潜行ポイントの岩まで行きつくのが一苦労なのである。
水を張った壷の中洲のような岩に登ってそこから海に飛びこむのだが、その岩と陸地との間が2,3歩程度とはいえ、手ごわいのだ。 岩に挟まれた狭い場所を通る波は激しく、洗濯機のように打ちつけている。滑ったら流されるので、両サイドにインストラクターがいて私達は手渡しされているかんじだ。
やっとの思いで岩の上まで行き、メンバーが揃ったところで次々に飛びこむ。またしても覚悟とかを考える間もなく即潜行。余裕がない方が迷いも恐怖もなく潜行できるとつくづく実感した。
午前のラウラウビーチは「横に広い」という印象だったが、グロットは縦の視界が開けた。
縦に伸びる岩棚に沿って生き物がいるのでラウラウと同じ魚がいても群れ方が違い、印象が違って見える。
横の視界はシュノーケリングでも得られるので、縦を感じると 「あ〜潜ってるんだなぁ」 としみじみ思った。
帰り道は予想通りきつかった。 体力を使った後、器材を背負って百数段の危険階段。
北海道弁で「疲れた・しんどい」ことを 「こわい」 と言うが、まさしく 「疲れた&怖い」 の掛詞で 「こわい!」 とつぶやく私とSちゃんであった。