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設立総会(2001年7月12日)における会長あいさつ
 
 

 本日は「高知フィールドミュージアム協会」の設立総会にご参集いただき有難うございます.発起人を代表して,「高知フィールドミュージアム協会」の設立に向けた私の思いを述べてみます.

 私の出発点は,「高知には自然史博物館が必要だ」ということです.

  高知には自然保護の普及啓蒙活動を専門的に行なう公的機関がありません.このため学校教育の現場では自然教育,環境教育に向けた教師の個人的努力が公的にバックアップされない現状があり,結局は理科教育にも暗い影を落しています.

  高知には色々な文化施設があります.たとえば図書館は,私も高校生のときにはずいぶんお世話になったし,今でもよく利用させて頂いています.しかし勉強というのものは,本を読むだけではダメです.特に理科の勉強は,机の前に座っているだけでは絶対にダメです.そして特に自然史の分野,つまり生物や地質などの「自然」を対象とした分野では,書物から得られる知識はごくわずかです.みずから自発的に自然に触れて学ぶということが大切になります.この自然との触合いを媒介する施設,それが自然史博物館というものです.

 自然史,すなわちナチュラルヒストリーというものについて考えると,じつは高知には全国に誇れる自然史学の伝統があります.その筆頭は牧野冨太郎ですが,牧野博士お1人が孤立して活動していたわけではなくて,その周辺にはたくさんのナチュラリストがいました.また植物だけではなく昆虫,化石,魚,貝など,いろいろな分野で高知はすぐれた人々を輩出しています.その背景には高知の豊かな自然がありました.こうした伝統の中で,たくさんのナチュラリストが望み,行政に何度も働きかけ,そして未だ実現していない「見果てぬ夢」,それが自然史博物館です.
 
 

 
  「自然史博物館は必要かもしれないが,高知にはカネがない」という人がいます.そこで,博物館について少し考えてみる必要があります.

  博物館というと,ものが「展示」されている所と単純に考えられがちで,それで人集め,客寄せをしようなどと考える人もいますが,実際には,いろいろな機能があります.

 (1)資料の収集(動植物の標本など)
 (2)資料の整理,保存
 (3)調査研究
 (4)教育普及
 (5)展示

つまり「展示」というのは,博物館の仕事のごく一部でしかありません.
 この5つの活動に加え,「自然史」博物館というのは「自然史」を扱うわけですから,その土地の風土自然と密接にかかわっています.つまりローカルな役割があります.

  まず,自然史博物館として本当に必要なものは何か,を考えてみます.
 (1)資料を保存するための建物
 (2)専門知識のある職員(学芸員)
 です.この2つはどうしても必要で,これから先,何度でも行政にお願いしていかねばならないと思っています.

  一方,博物館の機能として,必ずしも必要でないものとして,「展示のための建物」があります.館内展示というものがなくても,教育普及活動は可能ではないだろうか.プラネタリウムがないのなら,実際の夜空を見せればよい.「自然そのものが展示品だ」で良いではないか.

  思うに文化とは人でありシステムである.いたずらに博物館という「箱物」に固執するよりも,「箱」のない博物館システムをまず作ってみてはどうだろうか.

 そこで,当面は高知県内にいるナチュラリストの知恵をかき集めて,また県内各地の博物館的な施設や団体をネットワークで結び,全体として自然史博物館の機能の一部を代行できるシステムを作って行ってはどうか.そのように(私は)考えたわけです.
 
 

 ところが,私が驚いたのは,じつは非常によく似たアイデアが,すでに県民からの提案として県行政に採用され,実施に向けて動き出していたことです.それが「こうちフィールドミュージアム」という構想で,すでに県環境保全課から,平成12年3月に,「こうちフィールドミュージアム計画書」として発表されています.この「フィールドミュージアム」は現知事の選挙時の公約でもあったと伺っています.

  つまり「いきなり自然史博物館」は無理でも,「フィールドミュージアム」は行政レベルですでに現在進行形である.というわけで,極めて現実的な課題として,このフィールドミュージアムを応援し,充実させて行こう.そういう市民運動をしよう,という話になるわけです.

 これが,「こうちフィールドミュージアム協会」という市民団体の設立に向けての私の思いです. 私は「フィールドミュージアム」の活動を通じて,自然史博物館の必要性を県民に広く認識して欲しいと願っています.

 本日ご参加の皆さんの中には,これは自分が描いていたイメージと違うぞ,と思われる方もいるかもしれません.私はこう考えています.

1.「自然そのものが展示品である」わけですが,そういう活動は,やっているうち,いずれはセンターが欲しくなる.それは「自然史博物館に限りなく近いもの」ではないだろうか.

2. そもそも自然史博物館というものが,館内展示だけでその役割を果たせる時代ではありません.現に屋外の自然を「展示」物として採用している博物館もあるし,多くの博物館で野外活動は館の重要な活動となっています.フィールドと自然史博物館と,要はどちらも必要なのであり,どちらを先に造るかは大きな問題でないとも言えるのでないか.

  いきなり自然史博物館などと言いますと違和感があるかもしれませんが,煎じ詰めれば同じことなのだ,とも思います.

 このあたりのことも含め,本日はいろいろな意見が出され,討議されることと思います.

 今日の設立総会に向けて,多くの方から励ましの言葉を頂戴しました.また発起人の皆さんは準備に大変だったことと思います.特に大野さんは膨大な事務処理をこなされ奮闘されていました.本当に感謝しています.

 では,議事進行を,よろしくお願いします.
 

(2001年7月12日,熊沢秀雄)

 
 
 
 
 
 
 
 

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