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Guinea worm
 
 



メジナ虫
Guinea worm

1.
 メジナ虫(ちゅう)のメスは人の皮膚に住んでいます.卵胎生で,成熟したメスは体内にたくさんの幼虫を持っていて,それを外界に放出する機会を待っています.

 メジナ虫を持っている人は患部(虫のいる場所)がよほど熱いのか痒いのか,とにかく患部を水につけたくなるらしい.患部が水に入ると,メスはそれっ,とばかりに幼虫を放出します.

 水中に出た幼虫が運よくケンミジンコに食べられると,幼虫はケンミジンコの体内で発育します.体が少しだけ大きくなって,形も少しだけ変る.こうして「終宿主に感染可能な」幼虫となります.

 そういう幼虫を持ったケンミジンコのいる水を飲むと,人はメジナ虫に感染する可能性がある訳です.人に入ったメジナ虫は発育し,交尾し,メスは皮下に移行します.これがメジナ虫の生活史の概要です.
 

2.
 メジナ虫は歴史の古い寄生虫です.旧約聖書ではモーセに従ってエジプトを出たイスラエルの民が,砂漠で毒蛇にかまれて次々と死んだが,エホバの指示でモーセが掲げた「火の蛇」を見た者は死なずに済んだ,とあります.この「火の蛇」とは実はメジナ虫のことだったとも言われています.聖書とはいえしょせん伝説ですから,そして伝説というものは不合理なこと,脈絡不明の記述で満ちあふれていますから,どこまで真剣に考えて良いのやら.

 しかし記述の一語一語に何らかの根拠があったものと仮定し,想像力をたくましくすると,おそらくモーセの掲げたものは棒(旗竿とか杖とか)に蛇の巻き付いたような形のものだったかもしれません.そして棒に巻き付く蛇は医療行為のシンボルとされることもあります.だからモーセの民は,やはり何かの医療行為を受けたのではないでしょうか.

 で,棒に蛇が巻き付いているのが医療行為である根拠ですが,メジナ虫は長さ40センチもあって,この虫をゆっくりと棒に巻取ることで皮膚から引きずり出すという「医療行為」が行われたいたのだそうです.昔は中東から北アフリカにかけての地域では,医師の主要な仕事の1つがそういう作業であった?かどうかは知りませんが,メジナ虫が相当に蔓延していたことは事実のようです.


 メジナ虫には,たくさんの種類があります.人以外にも様々な動物に,いろいろなメジナ虫(または,その近縁種)が寄生しているんですね.哺乳類から鳥,爬虫類,両生類,魚に至るまで,メジナ虫の近縁種がいて,どれも似たような生活史です.つまりケンミジンコを中間宿主としていて,終宿主はケンミジンコを摂取して感染.そして終宿主の体内で成熟したメスは,幼虫を水中に直接放出します.

この写真でケンミジンコの体内にいる2匹の線虫(矢印)は,両生類を終宿主とするメジナ虫の幼虫です.




4.
 メジナ虫はフィラリアに似ています.フィラリアも種類が多いけど,多くは昆虫を中間宿主としています.たとえば象皮病として有名なバンクロフト糸状虫(しじょうちゅう)の中間宿主は蚊です.宮崎大学の名和先生によると,フィラリアは「空飛ぶメジナ虫」なのだそうな(註)
   (註)石橋信義(編)「線虫の生物学」第8章.東京大学出版.

 なるほど.たしかに,
-  メジナ虫はメスが水中に幼虫を放出する.それをケンミジンコが食べる.人はケンミジンコを食べて感染する.
- フィラリアはメスが血液中に幼虫を放出する.それを蚊が吸血して取り込む.人は蚊に刺されて感染する.
というように比べてみると,みごとな平行関係があります.フィラリアの幼虫は水中でなく血液中に放出され,蚊に取り込まれて空を飛ぶ・・・.
 
 
 
 
 

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