ハリガネムシとシヘンチュウ
1.ハリガネムシ
カマキリの体から細長い虫(ハリガネムシ)が出てくるのを見たことがありますか?
出てきたハリガネムシは,しばらく水の中でくらします.やがて交尾(こうび)し,メスは卵を産みます.
卵からかえった幼虫は水生昆虫(カゲロウの幼虫など)に食べられます.水生昆虫が成虫になり,水から飛び出してカマキリに食べられると,ハリガネムシはカマキリにとりこまれ,カマキリの体の中で成長します.
体内のハリガネムシがすっかり成長すると,カマキリは水に入って行きます.ふつうカマキリは自分からすすんで水に入ることはありませんが,,ハリガネムシにあやつられて,まるで催眠術でもかけられたかのように水に入っていくわけです.
そしてカマキリが水に入ると,ハリガネムシはカマキリの体に穴をあけて脱出します.
2.シヘンチュウ(糸片虫)
シヘンチュウも,いろいろな昆虫に寄生(きせい)します.下の写真はバッタに寄生していたシヘンチュウです.シヘンチュウの中には大変おもしろい性質を持つものもあります.カゲロウに寄生するシヘンチュウは特に有名です.
セトフチフキバッタに寄生していたシヘンチュウ
カゲロウに寄生するシヘンチュウは,カゲロウが産卵のため水辺の岩を訪れたとき,そのカゲロウから脱出します.ハリガネムシの場合と同じで,シヘンチュウに寄生されたカゲロウは,自分から水の中に入って行くようです.水中でシヘンチュウが脱出し,カゲロウは死んでしまいます.
カゲロウは雌雄で形態も行動もかなり違います.オスはメスに比べ眼が大きく接近しています.オスは羽化後は森の中で「蚊柱」のように群れて飛んで,それに惹かれて来たメスと交尾します.オスが水辺に戻ることはありません.
メスは交尾を終えると,渓流に沿って上流に向かって飛びます.そして適当な岩にとまり,そこで産卵します.もし,このメスがシヘンチュウに寄生されていたら,産卵することなく水に入って行きます.
シヘンチュウはオスのカゲロウにも寄生します.しかしオスは水辺に戻らないので,シヘンチュウとしては何とかする必要がありますね.
じつはオスのカゲロウに入ってしまったシヘンチュウは,このオスを「性転換」させるのです.シヘンチュウに寄生されたオスは,眼が小さくなり,メスのような外見を示すようになります.そしてメスのように渓流に沿って上流に向かって飛び,適当な岩に降りて産卵?をしようとします.あとは説明しなくても判りますね.
ハリガネムシもシヘンチュウも,昆虫の体の中にいて,その昆虫を自分のつごうのよいように,操縦(そうじゅう)しているのです.
宿主を性転換までさせて操る寄生虫としては,このほかフクロムシが有名です.