検索エンジン対策・サーチエンジン対策(SEO)、無料サーバー、ホームページ運営相談・セミナーのメディアネットジャパン
Click here to visit our sponsor
tanuki
 
 

タヌキ雑学

谷地森 秀二
 遺伝学的な研究によるとタヌキNyctereutes procyonoidesは約700〜1200万年前に、北アメリカでイヌ科共通の祖先から分岐したとされている。その後ベーリング海峡を渡りユーラシア北部にまで分布を広げたが北アメリカでは約1万年前までに絶滅した。
 今日、タヌキはアジア大陸東部の固有種で、北はシベリアのアムール川から南は北ベトナムまで分布し、また日本に生息している。1927年頃から毛皮を利用するために主にヨーロッパ東部に移入されたが、飼育場から逃げ出したもの(放獣との説もある)が野外で繁殖を始め、分布域をヨーロッパ北部と西部にまで拡げつつある。
 日本においては、北海道および奥尻島にエゾタヌキ N. p. alubusが、本州、四国、九州、佐渡、隠岐諸島、瀬戸内諸島、壱岐および天草上島・下島にホンドタヌキ N. p. viverrinusの2亜種が生息する。
 ホンドタヌキ(以下、タヌキと略す)は頭胴長50〜60cm、尾長は10〜15cmと短いが、毛がふさふさしている。体型はがっしりしていて四肢は短い。耳は小さくて丸く、顔はやや円形に近く、目の回りに黒い斑紋がある。このような顔つきがアライグマに似ているので、英名はRacoon dogまたはRacoon like dogという。毛色は黄色がかった褐色で、肩と尾の先端および四肢の毛は暗色である。体重は夏季は3〜5kg、冬季は皮下脂肪が増し、5〜9kgになる。毛は長く、冬季には下毛を生じ、皮下脂肪の増加も伴い太って見えるようになる。

 一日の生活は、日中はほとんど移動しないで夕方まで休息している。休息する場所は密集した藪の中、岩が積み重なったその隙間、アナグマやキツネが掘った土穴(タヌキは自分では穴を掘らないといわれている)、配水管の中、建物の床下などである。夕方から活動を開始し夜明けまでの間、途中短い休息を挟みながら、餌探しなどを行う。一晩に移動する距離は0.5〜10km、その範囲は1〜95haと変化の幅は広いが、他のイヌ科動物に比べると移動距離にしても面積にしてもその値は小さい。特に積雪量が多い地域に生息する個体は、冬季に数日の間、休息場に籠もったままで外に出かけて活動をしないでいることがある。
 餌がたくさんある場所には複数のタヌキが同時に現れ、様々な社会的な行動を観察することができる。いつも一緒に現れる2頭連れや、家族と思われる成獣と幼獣のグループなどではお互いに毛づくろいをしあったり、鼻と鼻を接触させてお互いの臭いをかぎあい挨拶をしたりしている。逆に個体間で優劣関係が顕著にみられる組み合わせもあり、優位な個体が劣位な個体に威嚇するときには背中を丸め、毛を逆立て、尾の付け根の部分を持ち上げ逆J字型にしてうなり声を発したり、肩で相手を突き飛ばしたり、かみついたりもする。一方、威嚇された劣位な個体は体勢を低くし、時にはうづくまって耳を伏せ、口を開けて悲鳴に聞こえる声を上げて自分が弱い立場であることを表現する。

●タヌキの「ため糞場」
 タヌキは特定の場所に糞を排泄し「ため糞場」を形成する。この「ため糞場」は、糞を食べる糞虫の活動が活発な時期には、新しい糞はすぐに形が崩れ無くなっってしまうが、糞虫の活動が活発ではない時期や、気温が低く糞の分解が遅くなる秋期から冬季には多くの糞が積み重なり、見事な糞の山が見られるようになる。頻繁に利用される「ため糞場」は積み重なった糞が高さ10cm以上になり、「ため糞場」の直径が100cmを越える場合もある。
 「ため糞場」の利用状況を研究した報告によると、タヌキは1日に平均2.5回排泄し、1個体が約10ヶ所の「ため糞場」を利用しており、特定の数個体が複数の「ため糞場」を共同で利用していたことが確認されている。また、タヌキは糞の臭いから個体の識別をしていることが予想されると報告されている。これらのことから、「ため糞場」は、個体もしくは家族集団間の情報交換の場として機能していると考えられている。

タヌキの「ため糞」



●タヌキの食べ物
 「ため糞場」から回収してきた糞を詳しく調べてみると、タヌキは雑食性で実に様々な物を食べていることがわかる。その大半は栗やドングリなどの堅果類、マタタビやキイチゴなどの液果類、ミミズやナメクジなどの軟体動物、バッタや甲虫などの昆虫類で占められる。また、ネズミなどの哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類なども食べられていることも少なくない。これらのものは地域や季節によって供給量が変化するが、それにあわせるように、糞の中のそれぞれの内容物がしめる量も変化する。
 また、住宅地周辺で交通事故に遭い死亡したタヌキの胃の内容物を調べてみると、季節を問わず非常に多くの個体から残飯類(御飯粒、ニンジン、梅干しの種、卵の殻、ビニール、ゴム、発泡スチロール)が出てくる。これらは生ゴミ置き場に出されたゴミを食べたり、給餌されていたためであると考えられる。残飯類は昆虫や木の実などの食物と異なり、年間を通じて供給される量に変化が少ない。そのため季節を問わず残飯類を利用することが考えられる。
 これらのことからタヌキは住んでいる環境や時期にあわせて、利用しやすいものを食べて生きている「何でも屋」であることが分かる。

●繁殖の面からみたタヌキの1年
 長い冬が終わり春が近くなるとタヌキたちの繁殖のシーズンが始まる。タヌキは一夫一婦性で、ペアを形成した2頭は年間を通じて行動を共にする。
 交尾は他のイヌ科動物でもみられるマウントした後に雄が体勢を反転し尻と尻でつながる交尾結合を示す。
 タヌキは自分が活動している範囲の中に数カ所の休息場を持ち、その日その日によって利用する場所が違うが、出産が近づくと特定の場所を出産、その後の育子用の巣として選び、徐々にその場所をペアで集中して利用し続けるようになる(以降、育子用に利用する休息場を「巣」と称す)。 
 妊娠期間は約60日で出産が近づくと雌は活動が鈍くなり、出産日にはほとんど一日中巣から出かけなくなる。産まれる子供の数は1〜8頭と幅があるが4〜5頭の例が多いようである。生まれたばかりの子供の体重は約100gで、黒い産毛に覆われ、タヌキ模様の毛色にはなっていない。目は開いておらず、歯も生えていない。飼育下では、雌は生まれたばかりの子供に雄が接触することを許し、一緒に羊水に濡れている子供をなめる行動が観察されている。また、妊娠・出産で体力が消耗している雌が外に採食に出かけている間は、雄が子供たちのそばに残り保温や毛づくろいなどの授乳以外の全ての世話を行う。
 子供は10日齢ほどで目が開き、歯は20日齢頃から生え始め、30日齢頃には生えそろう。この頃になると離乳し、子供は巣から出始め、巣の入り口付近で親子でもしくは子供同士で遊ぶようになる。また、それまでは巣に常にどちらかが残っていた両親が、子供だけを残して巣から出かけるようになる。子供は50日齢頃には親について巣から出かけるようになり「ため糞場」にも糞をするようになる。
 子供が親について出かけられるようになると、それまで利用していた巣を放棄し、家族で別の場所へ引っ越す例がある。引越を行った後、新しい巣へ転々と移動する場合もあれば、出産に利用した巣とは異なる場所を集中的に連続して利用する場合もある。

タヌキ



 子供は100日齢頃になると、成獣と変わらないほどの体格に成長する。この頃になると家族の行動に変化がみられるようになる。日中過ごす休息場は親子で一緒ではあるものの、夕方出かけていくときには、親は親同士、子供は子供同士というように夜間は親子で別々に行動し、翌朝には再び同じ休息場で日中を一緒に過ごすという行動がみられるようになる。その後、徐々に日中の休息場も親子で別々の場所を利用するようになるが、そのような場合、子供が利用する場所は親が過去に利用したことのある場所であることが多い。
 そして、子供の親からの分散が始まる。子供によっては家族で生活していた地域から遠く離れた地域へ新しい生活場所を求めて移動していく個体が現れる。長野県入笠山周辺の調査では地図上の直線距離で9km移動した個体がみられた。一方、家族で生活していた地域から移動しないで、ある時期を境に休息場だけ親とは異なる場所を利用するようになり、そのままその地域で生活し続ける個体もみられる。分散が起こる時期は個体によって異なり、短期間に集中して起こるわけではない。子供によっては冬の間中、親と同じ休息場を利用し続け、翌年の繁殖期が始まる直前に分散する個体もいれば、翌年の繁殖期になっても親と一緒に日中を過ごす個体もいる。このように子供が親から分散する様式はとても多くのパターンがあるようである。子供は約9〜12ヶ月で性的に成熟し繁殖に参加できるようになる。子育てが終了したペアは、子供が分散した後も行動を共にし、翌年にはまた同じペアで繁殖を行う。

●身近な動物「狸」
 タヌキは漢字で書くとけもの偏に里とかかれるように、昔から人の生活圏に近いところにすんでいた。今日では、農村地や山間地だけではなく、都市域などの人為的な環境にも進出して生活している。そのようなタヌキたちは、食料は生ゴミや餌付け家庭で給餌される物を利用し、休息や繁殖には空き家や配水管の中などを利用して生活している。このようにタヌキたちは自分たちが利用できるものであれば、たとえそれが人間が作ったものであっても積極的に利用して生活している。その反面、交通事故によって命を失う例も多く神奈川県川崎市では年間100頭を越える死亡が確認されている。こうしたタヌキ達の交通事故死を少しでも減らそうとして、道路標識により注意を促したり、タヌキが頻繁に横断する道路にトンネルを作って、そこを利用してもらおうという試みも成され始めている。
 多くの野生動物が人間の生活域から消えていっている今日、タヌキのように生態学的に高次消費者である哺乳動物が人間が作り出したものを利用しながら身近に生息し続けていることは大変興味深い。タヌキのことを更に知り、人間が、タヌキとお互いに良い付き合い方を考えていくことで、野生動物と人間が共存できる方法を見つけ出すことができるかもしれない。

(やちもり しゅうじ,四国自然史科学研究センター

 

トップページに戻る
 
 
 
 
 
 
 
 

tanuki

Click here to visit our sponsor