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ヤドリムシ

Epicaridea




 ヤドリムシは等脚類です.つまりダンゴムシとかミズムシ,フナムシなどと同じ仲間.ただ,ダンゴムシなどと違って,エビやカニに寄生しています.

 ヤドリムシはエビヤドリムシとカニヤドリムシに大別されます.カニヤドリムシのメスは,とても等脚類と思えないような不定形の体をしていますが,エビヤドリムシのほうは等脚類の原型をいちおう保っています.つまり「ダンゴムシの親戚」と言われれば,うむ,どことなくダンゴムシの面影が・・・,ぐらいの形には見えます.えっ? 見えませんか?

 さて,ここに取り出しましたのは,ユビナガホンヤドカリの腹部に寄生していたヤドリムシ.その名は驚くべきことに何と,ヤドカリノハラヤドリAthelges takanoshimensis Ishii と申します(そのままやんけ).長ったらしいのでヤドカリヤドリと呼ぶことにしよう.漢字で書くと「宿借宿り」.誰も漢字で書かないって?

 エビヤドリムシかカニヤドリムシか?という話になると,このヤドカリヤドリは明らかにエビヤドリムシです.何しろ等脚類の外形をいちおう保ってるもんね.

 ヤドカリヤドリのメスはヤドカリの腹部に外部寄生しています.よく見ると,腹面を外に向けている.つまりヤドカリの体表に背面を密着させてしがみついています.変な奴.

 で.外に向いた腹面をよく見ると,小さなオスがしがみついています(写真では見えません).こんな生活をしている虫もいるんですね.ヤドカリヤドリのオス君,キミは幸せかい?
 
 

ユビナガホンヤドカリに寄生しているヤドカリノハラヤドリ(矢印).






 そのヤドカリヤドリが卵を産みました.卵はバラバラに水底に転がっていました.それから数日.卵が孵化して幼虫が出現しました.幼虫の形態は,何と表現したら良いんでしょうね.とにかく写真を見てください.

 

ヤドカリヤドリの幼生.(左)背面から見たところ.(右)側面から見たところ.






 こういう虫が水底でころんと静止しています.そいつが時々思い出したように猛烈なスピードで泳ぎます.しかし背中が丸まっていることから予想されるように,まっすぐ泳ぎません(泳げません,というべきか).たとえるならネズミ花火のような軌跡を描いて,ぐるぐると猛スピードで泳ぎます.泳ぎの下手な奴が根性で泳いでいる感じ.それで数秒間,猛スピードで泳ぎ回って,すぐ力尽きて水底に沈みます.背中は丸めたまま,ころんと転がってしまいます.

 猛スピードでぐるぐる泳いで,首尾良くヤドカリにぶつかったら,そのままヤドカリにしがみついて寄生するのかもしれません.しかし今回はそこまで確かめることができませんでした.いきなりヤドカリではなくて,まずケンミジンコ類に外部寄生して,そのうちヤドカリに移るのかもしれません(註)
(註)長澤和也(編著)「フィールドの寄生虫学」東海大学出版.

 宿主を見つけるまで,ヤドリムシ幼生は何も食べないのでしょうか? 今回の幼生は珪藻を食べているように見えましたが,それも本当のところよく判りません.

 いろいろ疑問が残りますね.ヤドカリヤドリ(正式名はヤドカリノハラヤドリ)は,かなり高率で見つかるようです.皆さんがもしヤドカリヤドリを見つけたら,今回疑問として残ってしまったことを,ぜひ確かめてみてください.
 

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