太乙神数(たいおつしんすう)、六壬神課(りくじんじんげ)、奇門遁甲という三つの占術を三式(さんしき)と呼び、非常に古くからその名が知られており、中でも奇門遁甲は、漢の張良や三国蜀の諸葛孔明が実戦に使用して、大きな戦果を挙げたと言われています。
張良や孔明が、果してどのような奇門遁甲を使ったかは、ほとんど分かっていませんが、奇門遁甲が、兵を動かし、陣を築くための方術であったことは間違いありません。
当時、戦場に於いては互いに城や陣地を築き、相手側の弱点を見極めてそこを攻撃するという形態が取られており、攻撃するときの日時や、陣を築くときの日時によって何らかの課式や盤をつくり、作戦を立てたものと考えられます。
この、陣を敷くときに使われた遁甲盤を「坐山盤」(ざざんばん)と言い、攻撃するときには「坐山盤」の他に「立向盤」(りっこうばん)というものも使われるようになりました。
「天書派」と「地書派」
現在残っている奇門遁甲の門派は「地書派」(ちしょは)と呼ばれる「坐山盤」だけを使う門派がほとんどで、遁甲盤と言えば坐山盤を意味するのが普通です。 立向盤を使うのは「天書派」(てんしょは)と呼ばれる少数派だけになりますが、こちらも立向盤という名称は使いません。
私どもの学んだ明澄透派(めいちょうとおるは)の奇門遁甲には、立向盤と坐山盤の両方があり、「行軍三奇」という、立向側と坐山側の勝ち負けを予知する方法が確立されています。
それでは「地書派」は、坐山、つまり自分が動かない場合の方位しか使わないのかと言うとそうではありません。「地書派」は、坐山盤だけで坐山も立向も判断しますし、「天書派」は立向盤だけで坐山も立向も判断します。ただし実際にどう使うかは門派の秘伝であり、多数派の「地書派」と言ってもすべての門派が同じ使い方をする訳ではありません。また、その内容を部外者が知ることは不可能です。
『天書』または『地書』というものは門派の秘伝書であり、統一したテキストなどと言うものはありません。つまり門派の数だけの『天書』や『地書』があると考えるべきです。
現在、張耀文先生による『奇門遁甲天書評註』および『奇門遁甲地書評註』という書物が出版されておりますが、これは明澄透派の秘伝の一部を公開したものです。これらは、1960年代に台湾で出版されたものを、張先生自ら日本語に訳して日本でも出版したものです。台湾でも門派の秘伝書が公開されることなど、かつてなかった事です。
門派と古典
最近、『煙波釣叟歌』(えんぱちょうそうか)『奇門遁甲秘笈大全』(きもんとんこうひきゅうたいぜん)などの古典を研究する人が多いようです。これらの古典は、どの門派にも共通するような普遍的な内容で、どのようにでも解釈できる書き方になっており、門派によって異なる見解があります。また、こうした古典でも、版本には偽物が多く、門派では独自の原文を持っている場合さえあります。
占術を研究するのは、別に門派でなくとも、誰でも自由ですが、実際に使用するとなると、古典に照らして正しいかどうか、などと言うことは大した問題ではありません。
実占に必要なことは、どれだけ実践と検証によって裏づけられた理論か、ということであり、これは、大きな集団が何世代にも渡る実験を繰り返し、はじめて手に入るものなのです。
明澄透派の初代は梅素香(ばいそこう)という女性で、明代末の人ですが、この初代の時、すでに『透派奇門大法』という秘伝書が書かれており、門派としての方法論が確立されていました。つまり明澄透派の五術は、500年以上の間に、延べ数千人にも上るの門人により、数万例にも上る実践と検証を経ており、きちんと理解さえしていれば、そのまま実行してもなんら問題がありません。
これは他の門派にも言えることで、正統な門派でさえあれば、その理論は十分な検証を経た上で実践されるものですから、たとえ方法論が異なっても、大きな間違いは犯さないものです。
五術を研究するだけでなく、実際に使いたいと思うのなら、門派の五術を学ぶのが一番なのですが、門派というのは、必ずしもすべてが血族ではありませんが、やはり大きなファミリーであり、外部の人間、ましてや外国人を受け入れることなど有り得ません。
遁甲盤の使い分け
明澄透派の奇門遁甲には、立向盤と坐山盤があり、さらに年月日時の盤に分けられます。
年月日時は、使う主体の大きさによって、例えば、個人で使うなら時盤、家族で使うなら日盤、大きな会社や工場などで使うなら月盤、というように使い分けます。
一番肝心なことは、個人に対しては時盤しか作用しない、ということですが、これがあまり知られていません。
立向盤と坐山盤の使い分けも、ほとんど理解されていません。
通常、奇門遁甲は方位を見るための占術と思われているようですが、もちろん門派の奇門遁甲は、命・卜・相・医・山の五術が揃っております。
「相」の一種である風水で使う奇門遁甲は、巒頭(らんとう)つまり山や川などの目に見えるものの形状を記号化し、組み合わせで吉凶を見る方法と、陽宅盤(ようたくばん)、陰宅盤(いんたくばん)と呼ばれる遁甲盤を作って、家相や墓相を見る方法があります。
もともと、風水というものは地形を見るものであり、理気(りき)つまり課式や作盤よりも巒頭を優先させるものです。
太乙・六壬・遁甲の三式の中で、太乙は天式、六壬は人式、奇門遁甲は地式と呼ばれ、奇門風水では特に巒頭を重視し、巒頭で格局(かくきょく)ができない場合に限って遁甲盤で判断します。
格局とは、分類してパターン化したものという意味であり、「格物致知」(かくぶつちち)つまり分類することによって物事を理解するという、中国思想の根幹から生じた考え方です。
奇門遁甲の格局は、「奇門四十格」と呼ばれており、格局でない組み合わせにも、吉凶や象意が割り振られてはいますが、ほとんど無視して良いものです。
遁甲盤のなかに何らかの格局があれば、規則に従って、盤の主格というものを決定します。
立向盤では、使用する方位の格局を優先しますが、坐山盤では、もし使用する方位があっても盤の主格を優先します。
遁甲盤で家相や墓相を見る場合、どの方位に何があるかは全く関係なく、あくまでも盤の主格で判断します。このこともあまり知
奇門遁甲は、実践してみれば非常に有用かつ便利なものです。
一例を挙げますと、十数年ほど前、不動産がらみで少し大きな収入があり、税務署に申告の相談に行ったことがあります。
立向盤で「求財」の格局である「神遁」の方位を選び、もちろん「行軍三奇」で坐山盤に勝てる方位を選びました。
求財と言えば強引なやり方を通すものですから、最初は何とか税金を安くしようと、無理な理屈で押し切ろうとしたのですが、押し問答になるだけでどうにもなりませんでした。
ところがそのうちにふとアイデアが浮かび、こういう事ではどうでしょう、と担当の人に話しましたら「それなら理屈が通るから大丈夫」となり、結局税金は一銭もかかりませんでした。
税務署というのは非常に怖がられますが、案外、理屈さえ通れば、話のわかるところもあるのです。
奇門遁甲の吉方位を使うと、奇跡が起こって何でもうまくいったり、一方的に相手に勝てるかのように考えがちですが、実際は、物事の判断が良くなる、良いアイデアが浮かぶ、体調が良くなる、など、心理的、生理的な影響により結果が得られると言うべきです。
特に立向盤の使い方は難しく、出発する時間、到着までに要する時間、到着してから効果がでるまでの時間(応期=おうき)、これらすべてがマッチして初めて効果が得られます。
税務署の例で言えば、アイデアが浮かぶまでの押し問答の時間は無駄のようですが、実は「応期」を待っていたということなのです。
また、目的は税金を安くすることで、相手をやり込めることではありませんから、自分の理屈を通すことより、相手の理屈を利用するほうが有利です。
門派の奇門遁甲というのは、こうした実用面でのノウハウが確立されており、実際にどうやれば良いかは、いくら古典や秘伝書などを研究しても、とうてい得られるものではありません。
自分で実践しようにも、できることなど知れたもので、実際にそのような立場にならなければ、本当の意味での実践も検証もできません。
税務などは深刻な問題で、失敗して、まともに税金を取られるだけなら仕方がありませんが、時には脱税に問われて、莫大な追徴金を取られかねません。
よく、入学試験で立向盤を使うことがありますが、入試会場に向かって立向盤を使うと、午前中の試験にはほんど効果が出なかったなどということがあります。つまり応期の効果が出るまでには時間がかかるためですが、もっと工夫する余地があるのはおわかりかと思います。
入試などでの立向盤の効果は非常に限定的であり、ただ実力の範囲内でベストを尽くせるというだけですが、坐山盤を長期的にうまく使いますと、実力そのものを向上させることができます。
もともと坐山盤は、立向盤よりも確かな効果があり、立向盤のように使い方が難しいこともありません。
「天書派」や「地書派」なら、盤は一種類でも機能としては立向盤と坐山盤を兼ね備えています。ところが、本当に立向盤しかないとすれば、移動にしか使えないことになり、使える範囲が非常に狭くなってしまいます。
引っ越しには立向盤ではないかと思うかも知れませんが、奇門遁甲は具体的な目的を叶えるための方位術であり、使えばなんとなく運がよくなるというものではありません。
引っ越しというのは、転勤や家の新築などによって行なうのが普通ですから、もともと引っ越しには具体的な目的がありませんし、肝心な、日時を自由に選ぶこともできません。
もし具体的な目的のために引っ越すとすれば、費用対効果の点で非常に疑問があり、とうてい勧められるものではありません。
立向盤と坐山盤、もしどちらかを選ぶなら、どうしたって坐山盤であり、門派では地書派が圧倒的に多数派なのも当然と言う可きです。
奇門遁奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲奇門遁甲