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浦本和宏 さん(新世代ハワイアン バンド、エコモマイのウクレレ担当)エディション
の特製テナーウクレレ
製作日記


(※ご本人の許可により掲載しています)
(左でギターを弾いているのはエコモマイのメンバーの「鈴木祐輔さん」です。)

 今回は、あるご縁でプロのハワイアンバンド(エコモマイ)で活躍されているスーパーウクレレリストの浦本和宏
さんのウクレレを製作することになりました。
エコモマイは現在、アグネス・キムラさんのバックバンド等をこなしながら都心のハワイアンレストラン等で定期
ライブを精力的に行っており、メンバーの実力は群を抜いています。
 なお、エコモマイのバンドメンバーには、リーダーの面谷誠二さん(ウクレレ)、鈴木祐輔さん(ギター)、
根岸和寿さん(ウッドベース)がいらっしゃいます。


(製作にあたって)
 コアのウクレレで、テナーロングネック、カッタウエイということでご注文を受けました。
ハワイのサウンドかつ音楽性の高いものを弾けるようにというコンセプトで製作に入ります。
(15フレットジョイント、20フレットの予定)

(1) 型の製作


型には、桐の集成材を使います。桐は加工が楽で、軽量、板がキズつきにくいという利点があります。
糸鋸で正確に切ることが可能。


切断面を紙やすり等で整え、完璧な型に近づけます。面が整うとフェルトのシールを貼ります。
体力を要する作業ですので、型が完成した時に筋肉痛と1キロダイエットしてることがよくあります。

(2)側板の製作

 Audrey工房でストックしていた最高級のマスターグレード、ハワイアン・カーリーコア。
今回は6cm幅で側板を使用します。最近の工房、メーカーは側板を6cm以上に設定しがちですが、
市販のケースに入らない不便が多々あります。右は側板を曲げた後にライニングを接着しているところです。
 この杢の入ったコアは、実は側板にするには、ベンディングで曲げるにはとても大変でした。
たぶん、ウクレレを量産しているメーカーでは、側板には正目の普通のグレードのコアを
使用するのが通常だと思います。板を曲げる時にこの虎杢の部分から割れが入りやすくなるので、時間
がとてもかかりました。


左右が対称になることを第一に型にはめ込んで、側版を安定させます。ライナーはメイプルを使用。
ライナーを接着し、しばらく型に入れたままにします。

 (ベンディング・アイロン)
側板を曲げる際には、板は水に濡らしておきます。じかに触ると火傷するのでゴム手袋をして作業します。


(3)表板、裏版の作成(ブックマッチ)

ブックマッチで杢が左右対称になるように接着固定します。ここは側板の曲げと同様に熟練を要します。
気を抜くときちんと平面にならなくなるで注意が必要です。ちなみに私の先輩のウクレレ製作家の方は、
ブックマッチ用の人工大理石のテーブルをコリアン(韓国製)3Mというメーカーから取り寄せていました。
このテーブルは、接着剤がつかないようになっている特殊なものでした。

(4)ボデイのサウンドホールのインレイ
サウンドホールをサークル・カッターで切っていきます。
このサークルカッターというのが、力を入れて回すと中心がずれてしまうので、中心には瞬間接着剤を塗って
堅くさせてから慎重に切っていく感じです。サウンドホールの直径はテナーですので6cmに設定。

サークルカッターで、インレイの輪郭も切っておきます。
あとは、手作業で溝を彫刻刃で堀りますが、これがまた、熟練を要する作業です。今まで、ルーターという
器具でやっていましたが、体に悪い影響があるので手作業で今回やりました。インレイをはめる作業も
入れて半日かかりました。
Audrey工房の独特なインレイ組み込み作業です。


ダブルのパーフリング・インレイは、普通手間がかかりすぎてやらないですが、今回は気合が入ってます。

(5)ブレージング

ギターと同じ方法のXブレージングを施す場合、ブリッジの下がXの中心にくるように寸法取りしておきます。

接着後は固定が命です。鳴りの悪いウクレレは、
クランプをおろそかにしているケースが多いです。

表板にわずかにアールをかけておきます。(バイオリン構造を参考にしています。)こうすることにより、音の鳴りもよくなりますし、強度が増します。


これは裏板のブレージングの様子。裏板は特にアールがかかるようにしています。こうすることにより側板
の幅を深くとらなくても(6cm以上にしなくても)、深みのあるサウンドが可能です。

(表板)

(裏板)

チーク材とマンゴー材でブレージングをしています。タッピングすると小気味のよいトーンがします。

(6)表板、裏板と側板の接着
木工用ボンド(タイトボンド)をまんべんなくつけて
すばやくクランプし固定させます。タイトボンドは速乾性があり、すばやく板を固定しないといけません。


だんだんボデイが出来上がってきました。


ピックアップは、ダブルのピエゾです。この配置はオーバル方式になり、より生音に近い音を拾うことが出来ます。


クランプがボデイをキズつけないように厚紙をはさんで裏板を接着固定しています。


接着後、はみだしている所をデザインカッターで丁寧に切っていきます。コアは堅いので、すこし手が筋肉痛に
なりますが。切ったあとはヤスリがけしておきます。

(7)指板の製作

テナー用に黒檀とローズウッドの指板の溝を切りました。指板は、ウクレレの重要な所なので、いくつか作り、良いものをセレクトします。今回のローズウッドは黒檀に比べると軽量ですね。同じ種類の木でも堅さや重量が微妙に異なることがありますが。


フレットを入れていきます。バリが皆無になるよう、両サイドに黒檀の細い板を接着し調整します。
木は生きていて収縮するので1年ぐらい経つとフレットのバリが出てくる場合がありますが、右の画像の
ようにバインディングすれば安心です。


サイドポジションの穴(1.5mm径)。ハンドドリルで現在開けていますが、以前は電気ドリルでした。
電気ドリルの方が楽ですが、正確に穴あけするのでしたら断然ハンドドリルです。100円ショップでも
手に入ります。


ポジションマークを入れていきます。木にはモク目があることと、大きな穴の場合は電気ドリルを使用する
ので正確な位置にポジションマークの穴を開けるには少し熟練が要ります。ここもできればハンドドリルを
使用したいところです。電気ドリルの場合、時計回りと同じ右回りに遠心力がかかるので左斜め下辺りへと
開ける穴が広がることを予想して(0.5mmの誤差)小さい仮穴を開けたあと大きい穴を開けています。
こういうことは経験を積まないと分からない些細なことですが。ポジションマークの開け方、大きさだけでも
製作者の技量が分かるような気がします。(もちろん、サイドポジションの穴あけは小さいので楽です。)


二枚とも良い仕上がりです。黒檀の方が見た目に高級感がありますが、ローズウッドの方が軽量です。
ただ黒檀の方が堅いので持ちがいいです。黒檀の指板の方を今回使用することにします。

(7)ナット、ネック,ヘッドの製作

0フレット専用のナットをつけました。黒檀のナットです。


ネックガイドに材を差込、斜めに切ります。ネック材はマホガニーです。コアもありますが、
最近はマホガニーネックが主流です。長いノコギリを使用します。綺麗に切るコツは、均等に切る力加減。


左は切った直後。右は面を専用の平面鉄やすりで整えてます。



ヘッドの加工。糸鋸でアウトラインを切ります。重要な加工部分です。


ヘッドを接着。斜めの接着面はすべりやすいです。クランプで固定が必要です。

乾燥後は平面になるよう、調整。

指板を接着します。

ヒール(カカト)の接着


あらかじめ、ブロックごとに切ったものをヒールに使用します。


指板の黒檀で厚さが薄ければ、ウクレレ全体の軽量化につながります。しかし、演奏カッティングの
高さが
低くなるので調整する必要があり、今回もボディにあたる指板部分のみ板厚を変えています(つまりボディと
指板の間に板を挟む感じになります)。白い板は補強用のメイプルです。


まずカッターで削るように薄く切ります。その後、板やすり、紙やすりで丁寧にネックを仕上げていきます。
結構、体力と時間のかかる作業です。

ヘッドのペグ穴あけ


ハンドドリルの細いものから徐々に穴あけ。電動ドリルでする場合は、ウクレレメーカーのようにいっぺんに4つ
の穴が開けられれば理想的だと思いますが、手作業ならば手間はかかりますが正確に穴あけができます。

ヘッドの突き板

高級感の出る板目の良い黒っぽいローズウッドの突き板をヘッドに接着します。突き板は0.6mmの厚さです。


ヘッドロゴのインレイ

「Audrey」のロゴを、貝のインレイで製作します。これは字が多いので大変手間がかかりましたが、今回は
気合が特に入ってます。

(参考)

浦本さんご本人の要望で黒っぽい塗装にしてほしいということで、左(クリアーのみ)、右(油性、クリアーブラック)
で同じ板の裏表で塗ってみました。前は、オイル仕上げの黒で試してみましたが、杢が黒すぎてしまいやや
NGでした。今日改めて油性の染料(ワシン社製)で染めたあとにクリアーを塗ると、これが意外といい感じの
古めかしい黒が再現できました。今回は、少しだけ黒に染めましたがあまり目立たないかんじで、杢が強調され
風格のある色合いになりました。

ヘッドのインレイ(イルカの親子)

ご本人にインレイのアイデア、サンプル例をFaxで送り選択してもらいました。
イルカの親子は手をつないでいる珍しいインレイです。海面に向かって浮上しているところを下から見ている
感じになります。(余談ですが、風水では、こういうツインのものを家においたりすると不思議と家族関係、
夫婦仲、恋人仲などがよくなります。とくにいろんな種類で家の玄関や食堂におくといいでしょう)。

(私もこのインレイ・デザインが気に入ってます。)


ブリッジ、サドルの選択


今回は通常のブリッジを使用、黒檀で作成。これはアンダーサドルが入れられるようにするためです。


フレット、指板の調整

弦を張ってびびりがないか調べます。この調整はきちんとすると大変時間がかかります。指板はわずかにスキャロップして指になじむようにしています。バリを完全に除去。(フレットは若干まだ引っかかる部分が
あるのでさらに調整が必要ですが、普通に弾く分には問題ないところです。)


完成!

根岸さん(エコモマイのべーシストの方です。)の試演奏

浦本さんのご自宅のスタジオにて偶然、根岸さんが来訪!!なんと浦本さんとのスペシャル演奏が実現。
思いがけず素晴らしいお二人の演奏を浦本さんのボーカル教室の生徒さん(桃子さん)とともにしばし
堪能しました。おうー、ウクレレは弾く方によって音色がかわるのですね、驚きです。

ボデイ(Top,Back,Side)











(製作後記)
振り返ると今までで一番体力、気力を使い果たした作品でした(いやー、ちょっと言いすぎですが。でも、今は
作り終えてとても充実感があります)。
音は、根岸さんいわくこのウクレレ「真っ直ぐ」な性格。明るいウクレレの音がします。アンプに通した音は予想
以上にいい音でした。ライニングにメイプルを使用したのでクラシックとウクレレの中間のような音ですね。
反省点としては、製作途中でネックの太さ、指板のチェックを浦本さんご本人に確認する時間が持てなかった
ことでしょうか。
あと、サイドの深さを少し足す必要があったことです。それからバック板にアールをかけたはずが、接着時のクランプのかけ具合で平らに近くなってしまい大反省。ウクレレ製作は、気を抜くといろいろ予想外に出来てしまうところがありますね。一人で作るというのはそういった集中力の持続が試される感じです。
今回は、浦本さん、そして試演奏してくださった根岸さん、演奏者としての観点でウクレレ作りに多くの貴重なアドバイス、要望を頂き、誠に有難うございました。

(今後はUramoto Editionとして定着させたい、シリーズ化できたらと思います。)

(更新日:2006.10.8.)


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