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文−宇都宮美穂
草野マサムネ−マ
三輪テツヤ−テ
田村明浩−田
崎山龍男−崎
【検証】”スピッツのロック”とは?!
●ニュー・アルバムその名も『ハチミツ』!(9月20日発売)を待ちきれない身と致しましては、その匂いでもかげないものかと、先月のマサムネ君の言葉を頼りに迫ってみたいと思います。「(アルバムは)ポジティブなスピッツのロック(笑)になってると思う」とは?
忌野清志郎「いるんだよ、こういうダサいこと聞くヤツが!」
奥田民生「俺のデカい口」
倉持陽一(真心ブラザーズ)俺」
八熊慎一(SPARKS GO GO)「外国にあって日本にないもの」
蘭丸(スライダーズ)「俺、ロックって嫌いだもん。ロックやってるつもりなんて全然ないもん」
ローリー寺西(すかんち)「思春期の衝動という意味で”恋”ですね。僕らが恋を歌っても愛を歌わないのはその理由です」
以上、五十音順に並べてみましたが、この人たちは私が出したあるひとつの質問に対して答えています。さて、そ質問とはいったい何でしょう。そうです、賢いあなたならもうわかりましたね、それはつまり「あなたにとってロックとは?」――あああ、くだらなくてごめんなさい。くだらないついでに私の友人が某ヤンキー系女性ロッカーにサインをねだり、自慢の革ジャンを差し出したところ背面に堂々と”LOCK'N ROLL”と書かれて、これじゃ鍵転がし、思わず「なんてこと書くんだよ〜っ」と叫んだという実話がありますが、ロックとはもしかしてその程度のことなのかもしれません。あのー、するたび思うんです、二度とこんな不毛な質問はしないぜと。しかし歴史は繰り返すのですね。またやってしまいましたですよ。本日答えてくださるのは、次回作は「ロック」との噂があるスピッツのみなさんです。
--ズバリお聞きしましょう。スピッツはロックですか?
テ (オヤジ座り&巻き舌口調で→)ロックだろー、それは!マ (お坊ちゃん座り&丁寧口調で→)ロック…、でしょうね。恐らく
対照的なおふたりではあるが、ではその裏付けはと問えば、「…ええとねぇー」と、いきなり詰まる三輪君に、「ははははは。考えてなかったの?」と、草野君。なんてこったい。
マ あの〜、あんまりロックってものをあえて意識することはないんですけど、たとえば最近、若者の間ではサンプリングしてあるような音楽をクールとか言ってて。(笑)だけどそういうのに浸れない自分っていうのがいて、そういったときにやっぱり自分はロックなのかなって思ったり。それとか逆パターンで、熱いメッセージを歌ってて、世間一般で言われるロックっていうものを聴いたときも、俺のロックはこうじゃないって思ったり
つまり比較対象によって初めてロックなるものを意識するわけで、では、そんな彼らのロック感はというと、
テ 体温を感じるもの
--ああ。音に体温があるという。
テ うん。まずね、ドラムは打ち込みはダメ!
--やっぱりロックは生ですか。
テ 生だね。生でやってりゃロックマ でも、俺なんか打ち込みでもロックだなって思うともあるけどね
テ 認めたくないねっ
マ えっ!?…
一同 (笑)
かつてジグジグ・スパトニックなるB級ロックバンドにすら「ロックを感じた」草野君。この人の場合、ロック、何でもありとばかり、広い範囲でとらえている模様。
マ だからね、昔の人がやってたことをありがたがって焼直ししてるみたいなのはロックと思わなくて。全共闘的な言葉で言えば既成の価値にとらわれない音楽?そう言うとパンクと同義語になっちゃうけど、でもそれがロックじゃないのかな。きっとド下手なヤツでもやれる音楽なんですよ。心を動かすという点で、テクニックを超えちゃうっていうテ そうだね。ロックって固まってない
マ 俺はビートルズが好きだからとか、俺はストーンズが好きだからっていうふうなのが、スピッツにはまったくなくて。ビートルズ風とかストーンズ風とか、日本にはいっぱいあるけど、そういうのはロックじゃない…っていうか、好きじゃない
田 逆に俺たちさ、そういうルーツがないぶんだけ、古い/新しいにかかわらず、いいものはいいっていまの歳になっても吸収できるんじゃない?
音楽的偏見がないのは、彼らのバリエーション豊かにして冒険心溢れる曲の数々を聴けばわかるが、それにしてもものすごい雑食ぶりで、
マ ラジオ番組とかやると「こんなのまでかけるの?」って言われて。演歌からハ−ドコアからtrfまでもうめちゃくちゃかけるから(笑)
と草野君。
マ ロック云々は別にして、パワーのある音楽っていうのは、やっぱりカッコいいって認めちゃう
--そもそも”何々風”とか考えた時点でパワーがダウンしてるっていうのもありますよね。オリジナルとしての迫力に欠けちゃう。
マ そうそう。やってる本人の精神がそこで出にくくなっちゃうし田 だから草野が曲を作ってきて、それを全員でやるときに、とりあえずアーティスト名を挙げたりするんだけど、俺たち実際そのアーティストの音楽を聴いてなかったりするもんね(笑)
一同 (笑)
--ちなみにみなさんがこれはロックだって初めて感じたのは何ですか?
テ 俺はやっぱ「ヤング・ミュージックショウ」のKISSかな
--NHKの。
テ そう。小学3年ぐらいのときに見て。それこそロックなんて聴いたこともなかったし、しかもちょうどジーン・シモンズが口から血を出してたんだよねー。一同 (笑)
テ ビジュアルから入ってった(笑)
マ 俺、なんだろう?世良公則かなんかだよ、きっと(笑)
--テレビでロックを知った世代で。
マ そうそう。ちゃんと洋楽を聴き出したころには、もうロックとかじゃなくて、これはニューウエイブだとか、これはハードロックだとかって、細分化して聴いてたからテ けど、最初に買ったレコードはお互いABBAだった
一同 (笑)
マ 全然ロックじゃない(笑)
テ 俺もあんまりロックとか意識してなかったな。はっきり意識したのは、中学になってAC/DCとか、マイケル・シェンカーとか、ハードロックにハマってからだと思う。ホラ、中学のころってみんなやっぱり邦楽のベスト10モノを聴いてるのね。だけど「俺はちょっと違うぞ」って意識で洋楽を聴き始めて、そのへんからじゃないかな
マ そういう意味ではロックって、なんていうか不良の匂いがあったりして、自分を強くしてくれるような作用があるよね?
崎 俺はね、同じニュアンスで、でもちょっと違うけど(小声で→)横浜銀蝿
一同 (笑)
マ ああ、横浜銀蝿はロックだ(笑)。アナーキーとかもそうだけど、確かに聴いてる人間を強い気持ちにさせてくれるよ
--噂によればみなさんの次のアルバムはロックなんだそうですが、人間を強くしますか?
一同 シーン
--あれぇ?(笑)
マ (笑)別に聴いてる人を強くはしないと思う田 うん。強くはしないけど、動かすとは思うけどね。ドキドキしたり、ワクワクしたり。たとえばお酒なんかでも、飲んだらちょっとは変われるわけじゃない?そのぐらいの作用はあるかもしれないけど
--はあ、サウンドからゴリゴリのロックとかいうんじゃなくて。
マ そうそう。俺たちが今度のアルバムはロックだって言ってるのは、たとえば『空の飛び方』っていうアルバムは聴き手に結構優しくて、「君も僕も一緒なんだよ」みたいなところがあったと思うんですよ。でも、今度のアルバムはそういう部分でちょっと突き放してるようなところがあるから、その突き放し加減がロックかなって
--そういう考えになるというは、やっぱり「ロビンソン」のヒットが関係してるんでしょうか。
マ それは大きいでしょうね。影響は絶対あったと思う。あの〜、すごく曲作りに関してラクになったんですよ。それまでってスピッツのことを知ってる人間の絶対数が少ないってことを考えると、あんまりヘンな曲はやれなかったんですね。その曲だけを聴いて、これがスピッツだと思われるのはやっぱり怖いから。でもいまだと一応僕らとしてはフラットな曲である「ロビンソン」を知ってもらえてるから、こんなこともやるんだなって思ってもらえるでしょ?これからはどんどん冒険やったりバカやったりできるなって思って嬉しいんですけど
--じゃあ、次のアルバムには、もしかして想像がつかないような曲も入ってるんですか?
マ う〜ん。…。いや、そう言いながら保守的だったりもするから一同 (笑)
テ っていうかね、僕らとしてはすごい変わったことをやったつもりでも、マサムネが歌うとやっぱりスピッツだな〜って感じになっちゃう不思議なところがあるから。それはいちばん強いところでもあるんだろうけど、だから聴く人によっては裏切られたって思うかもしれないし、スピッツらしいなって思うかもしれないし。いろんな受け取り方ができるんじゃないかな
--ではですね、ヒントとして次のアルバムでそれぞれやった新しいチャレンジを教えていただけませんか?
テ それはちょっとな〜
--ええっ!?(笑)
マ 俺はあるな崎 俺もあるんだ
田 俺もあるけど
--だったら教えてください。
テ でも言いたくないことだしな〜一同 (爆)
--言いたくないなんて、そんな〜(笑)。
マ じゃあね、俺はね、”君”とか”お前”っていうの以外に”あの娘”って言葉を使った。しかも片思いの歌で(笑)
--素敵ですねー。
マ うん。”あの娘”…(←ひとりで悦に入ってる)田 俺は自分から進んでギター・ソロを弾かせてもらいました
--それが聴けるんですか?
田 いや?俺は弾いたとは言ったけど、録ったとは言ってない
--ああ、却下だったのか。
一同 (笑)テ あんまりにもアバンギャルドすぎて消された(笑)
田 でも俺の中では入ってるの!
---たとえばみんなには聴こえなくても田村さんにだけは聞こえているという(笑)。
田 そうそう。あとキーボードも弾きましたマ それは残ってるの?
田 (イバッて→)残ってます!
マ ホントに?(←懐疑的)
田 ホーントだよー。ただクレジットはされてないけど
一同 (笑)
テ それはオマエ、プレイとして認めてもらってないってことだよ
田 いや、認められてなくても、鍵盤には触ってるよ
マ そう、「指が足りないから、ここ押さえて」って言われて、確かに押さえてた
一同 (笑)
崎 俺はねぇ、初めて(無言で→)”カァーッ”っていうのを入れた
--ええ?(笑)それはコーラスの役割?
田 ううん、効果音一同 (笑)
--で、効果的なんですか?
崎 効果的、効果的
--それがあるとないとじゃ全然違うんですか?
崎 もう、ぜ〜んぜんっ違う!すっごい盛り上げてるもん、それで一同 (笑)
--あの〜、なかなかヒントになりませんねぇ?(笑)
田 (笑)テツヤまとめて、じゃあテ 俺ぇ?う〜んと、新しいチャレンジがあって、今回いちばん悩んだのはね、アバンギャルドなことを感覚だけでやるんじゃなくて、ちゃんと考えてやるっていうソロを1曲やってるんで、それを聴いてもらいたいです
--なるほど〜。それは聴いてのお楽しみということで。きっとドキドキするようなアルバムになるんですよね。きっとね??
田 あっ、疑ってるーっ
--いやいや、いやいやいや(笑)。
テ でもね、笑っちゃうカッコよさがあるのは確かマ うん。無難なアルバムじゃ絶対ないっていうか。レコーディングをするときにまず考えたのは、「ロビンソン」で僕らを知った人も、そうじゃない人も、とりあえず聴いて「まあまあいいんじゃない?」っていう感想じゃなくて、「すっごいいい!」とか「うわ、なんかヤだ!」とか、はっきりした感想を持ってもらえるようにってことなんです。少なくとも、100人中100人が絶賛するようなアルバムは作りたくなかった
--なんだか、頼もしいような、不安にさせられるような(笑)。
マ 大丈夫、大丈夫
--なんで?
マ 決め手には「ロビンソン」と「涙がキラリ☆」が入ってるから一同 (爆)