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2002.10月号 Go Go Guitar

文−swingo高橋


草野マサムネ−

三輪テツヤ−

 

デビュー15周年を迎えたスピッツが、2年ぶり、10作目のオリジナルアルバムをリリース。極上のポップメロディ、永遠のバンドサウンド。『三日月ロック』は、まさにしばらくぶりの”スピッツらしいスピッツ”、そんな実感を抱かせてくれる。それほど、アルバムの中のどれもが、王道を行く名曲ばかりなのだ。どうすれば、彼らのようになれるんだろうか。そもそも、どうやって、あのバンドサウンドは出来上がってきたんだろうか。スピッツのギターサウンドを担う草野マサムネと三輪テツヤ、二人が待ってくれている場所へと急いだ。 

 

--お二人とギターとの出会いを教えてほしいのですが。

 中学生のころ、80年代前半はヘビメタブームだったんですよ。マイケル・シェンカーとかランディ・ローズとか、そういったギタリストがロック少年のヒーローだった頃だったんで。それで、自分もそういう風に弾けるようになれたらいいなと思って始めたのがきっかけですね。初めはアコースティックギターです。親が若い頃に買った埃のかぶったガットギターが家にあったんで、それで始めました。そのギターを弾いていてひと通りコード押さえたりできるようになっていたので、後でエレキを買った時はラクでしたね。エレキは弦もやわらかいし、ネックも細いんで。曲とかはギター教則本を買ってきて覚えました。俺、わりと、電気製品なんかでもマニュアルをきちっと読むタイプなんですよ。ギター入門みたいな本をちゃんとレッスン1から攻めていって。マニュアル君なんです(笑)。エレキギターは最初はストラトの国産コピーモデルを買いました。自分の中のイメージでは、ストラトとレスポールっていうのが代表的なギターとしてあった。形からして、太くてロックっぽい音がするのはストラトのほうだろうと思ってて。予備知識がなかったんですね。それでストラトを買ってきた。そしたらわりと細くてシャキッとした音なわけで、ショック受けました。あ〜、違ってたって。でももう買っちゃったからしょうがないんでそれ弾いてましたよ。いつかはレスポール買ってやるぞって思って(笑)

 俺も最初はフォークギター。別に自分から進んで欲しいとは思ってなくて、お年玉でゲームを買おうかなと思ってたら、母親から、俺が小さい頃バイオリンやりたいとか言ってたもんで、それだったらギターを買えばって言われて。中学1、2年の頃かな。でもFのコードが押さえられなくて、1年くらい埃かぶってたな。うん、Fでつまづきましたね。俺、手が小さいんで、ずっとそのせいにしてたんですけど(笑)。で、そのうちロックを聴き始めるようになって、中学3年ぐらいで、エレキを買った。グレコの黒のレスポール。それが一番安かったんだよね。チョイ傷で3万円もしなかったんじゃないかな。で、エレキ持ったら、Fも押さえられるんだよね、簡単に。それからはもうエレキですね。リッチー・ブラックモアのアルバム聴いて、ひずんだギターにノックアウトされました

 今と比べて、ギター自体が本当に高かったよね。5万円ぐらい出さないと新品って買えなかった。アンプも高くて買えなくて、シールドをステレオに差してたもん。それでステレオが飛んじゃったりしてね。ラジカセに差して弾いてる友達もいて、「どこそこ製のラジカセがすごくいい。”ひずみ”がする」とか言って(笑)

 

--するとお二人とも同時期にギターを手にしたということですね。

 その頃って、ちょうどハードロックの時代でヘビメタとかジャパメタのブームだったんですよ。メンバー全員歳も同じだし、通ってきた遍歴もすごい似てる。とにかくギターがひずんでないとダメだった。ポリスなんて大人の音楽だと思ってたもん。その頃はギタリストになりというより、なんとなく漠然とバンドやって目立ちたいっていう気持ちが強かったな。当時まわりにそんなにギター持ってるやつとかもいなかったし、ロックやってるやつも少なかったから

 俺も最初はギタリストとしてやりたかったんですよ。周りは意外に楽器持ってるやつが多かった。福岡だから、そういう土地柄なのかな。ギター弾き始めたのが中2ぐらいからで、高校に入ってから、さらに弾き始めるんです。俺ね、ゲームでもなんでもそうなんですけど、一番初めは誰よりも上手く出来るんですよ。でも慣れてくるとね、追い抜かれちゃうの(笑)。周りがどんどんギターが上手くなっちゃって、こっちは上達が遅いから、まわりのレベルが上がってきちゃって。「俺ってギター、ダメなのかな」と、ぼそっと思ってて。そしたらその時やってたバンドのヴォーカルがやめちゃって、仕方なく歌ってみるかなと。ギターから逃げるようにね。それまでは歌を積極的にやるということはなくて、あくまでもギタリストに憧れてた。でも段々好きな音楽も少しずつ変わって、ジミヘンとかキース・リチャードとか少しずつ渋めの人も好きになってきた。ポール・ウェラーみたいな人見てると、歌いながら弾くのもかっこいいなと思って。で、歌も始めたんです

 

--はじめからオリジナルを作り始めたのですか。

 いやいや、最初はコピーです。ハードロック系のラウドネスとかアースシェイカーとか、あとチェッカーズ(笑)。オリジナルは高校に入ってから、自分で作り始めてはいたんだけど、「こういう曲が出来たんだけど」って、人に聴かせるのがめちゃめちゃ恥ずかしくて。「俺のポエム読んでくれる?」みたいな、それに近い恥ずかしさがあるんですよ。それで、自分が曲を作っているんだという告白がなかなかできずにいた。ところが高3の時に、バンドでコピーやるにも段々煮詰まってつまらなくなってきたんで、じゃあオリジナルをやってみようかってことになって。その頃、高校の卒業記念ライヴでライヴハウスを借りてやることになった。そこでオリジナルをやってみようと。その時はいわゆる「宝島」系のインディーズバンドに興味があって、トンガリキッズになってて。”なんちゃってパンク”みたいな曲で有頂天になってた。その時作った曲がヘビメタじゃなくて良かったなと、今思いますよ

 マサムネと同じで、ハードロックとヘビメタのコピーばっかりだったな。好きなギタリストっていうのは特にいなかったけど、当時人気があったバンドはよく聴いてた。マイケル・シェンカーとかオジー・オズボーン、バンデンバーグとかAC/DCとかアースシェイカーとか

 やっぱり、ヘビメタのバンドのコピーやるってのは”でかい音が出せる”っていうのがひとつあるかもね。たぶんね、俺らが今高校生だったとしたら、スピッツなんてコピーしませんよ(笑)。ミッシェル(ミッシェルガン・エレファント)とかTHE YELLOW MONKEYとかね、そういうのやりたいんですよ、高校生ぐらいの時って。でかい音が出せそうなやつをやったほうがいいですよ、若いうちは特に。でかい音出すとスカッとするから

 

-意外に”でかい音好き”だったことがわかったんですが(笑)、今のスピッツのあのキャッチーなメロディにはどうつながってくるんですか。

 ハードロックとかヘビメタなんかが好きでずっと聴いてはいたんだけど、並行してポップな自分っていうのもあったんです。「やっぱりパンクでしょ」って言いながら、隠れファンみたいに歌謡曲も好きな自分がいたりという、ね。一種の二面性を持っていて、それがスピッツを結成したことによって、素直に出せるようになった。それで、今に至っているんです。メンバーもみんな世代的には『ザ・ベストテン』とか見てきてるしね

 ただ、ポップスとかって、実際に演奏するとなると難しいんだよね。キーボードが必要だったり。オリジナルなフレーズがあるのはやっぱりロックのギターバンドだったから、まずはそういうのをコピーしたかったんだね

 そういう風にバンド風に演奏できて、なおかつ、ポップスの中にあるキャッチーなイメージも出せたらいいな、というのが、うちのバンドのスタイルなんでしょうね

 

--草野さんは曲を俳句のように作ると聞きましたが?

 俺が作り始めた頃は、なんていうか日本の曲って試行錯誤してる状態っていうか、歌詞の乗せ方が素人耳にもあまり上手くない気がしてた。筒美京平さんの曲に松本隆さんの詞っていうのはすごく洗練されていて好きなんだけど、ロックの世界でも、もっときっちりできないのかなと思ってた。ロックなメロディに歌詞を乗せると、ちょっと奇妙なことになっちゃうこともあるんだけど、それをどうにかできないかなと、ずっと考えてましたね。言葉の持つイントネーションを壊さないようにメロディに乗せるやり方とか。あと、日本語って韻を踏みすぎるとちょっと逆効果だったりするんだけど、適度に韻を踏むやり方とかね。もちろん最近はみんな上手だし、ヒップホップとかすごいよね

 

--自分なりの歌詞作りの時のチェックリストがあるんですね。

 掟がありますね。たとえば”ん”を1音とは考えないとか。”ん”でメロディを伸ばすのとかはあんまり使わない。また、たとえば”水”なら”みず”であって、”みーず”というメロディは絶対つけない。だから歌詞の意味よりも、そういう自分で作った法則に沿って作っている。そうすると段々歌詞がシュールになってきたりもするんだけど(笑)、それはそれでいいかなと。音に規定されてそういう言葉にならざるをえない、でもそれはそれで面白いと思う

 

--スピッツはステージも小気味よくポンポンと進みますよね。

 そう言ってもらえると、いいんですけど。イベントなんかで各バンド30分ずつの持ち時間だと、俺らだけ8曲くらいやってて、他のバンドは3曲ってことが多いんですよ。ひょっとして、俺ら、人より多く働いてないかって(笑)

 

--スピッツサウンドにとってものすごく大切な要素のひとつに、三輪さんのあの独特のアルペジオがありますよね。

 そう言ってもらえると、嬉しいね。コード(進行)は流れてるのに、ギターは同じ音がずっと鳴ってるっていうのが、すごい好きだったの。しかも簡単に弾ける。そういうのが好きだったし、ハードロックやヘビメタ聴いてても、なんかちょっとスローテンポでアルペジオの印象的な曲とかが好きだったし。でも最初はね、いつも自分がアレンジするとアルペジオばっかりで、すごいイヤだったの。なんか違うの弾きたいなって感じで。でも笹路さん(笹路正徳氏。スピッツ初期の共同プロデューサー)とやって、すごい自信持てた。そうか、ひとつのカラーでもいいのかって

 

--初期の頃は、ギター1本のデモを聴いてみんなでアレンジしていたんですか。

 今も変わらないよね、基本的にはね。マサムネの持ってきたデモテープを聴いて、マサムネにコード譜書いてもらって。で、とりあえずやってみようって。最近は俺の弾きそうなアルペジオ、最初からマサムネが入れてきたりするのもあるし(笑)。アイデアはメロディから触発されてというよりも、コードかな。マサムネの持ってきたコードの流れから音を作っていくから。フレーズに開放弦が使えるか使えないかは結構重要なんで、マサムネが突然キーを上げたいとか言い始めると、「えぇーっ!」とか困ったり(笑)。キーによって使えるコードもだいぶ変わるからね

 

--どんなキーやコードが多いんですか。

 好きなのはA。開放が使える。あとナインスが好きなんですよ。ナインスって知ったのもプロデビューして何年か経ってから。コードの呼び名とか滅茶苦茶だったもんね。演奏はやってたんだけど、呼び名がわかってなかった。最初にプロデューサーに譜面に起こしてもらった時に、びっくりしたんだもん。「こんなの押さえられないですよ」って言ったら、「お前が弾いてるんだよ」(笑)って言われた

 俺ら、マイナー7のことを”あやしいコード”とか言ってたよね。メジャー7は”おしゃれコード”。スピッツ用語っていうか

 

--今回のアルバムで、共同プロデュースの亀田誠治プロデューサーが入って大きな変化は?

 今までの方の中でも、俺の印象では一番ポップな人。亀田さんはオールラウンドっていうか、あまりロックとかそういう垣根がない。だから俺の中の歌謡曲なんかが好きな部分、ポップな部分を引き出してくれた

 すごい俺ら寄りの人だと思う、今までのプロデューサーの中でも、特に似た考えを持った人。だから話も早かったし。俺らのやりたいことを具体化するためにはどうしたらいいかっていうのを、すごく上手く引き出してくれたね

 

--先行シングルの「水色の街」、音圧がすごいですね。

 あれ、音いいんだよね

 アルバムの中でもかなり音圧のある曲なんですよ、実は。たまたま今回お願いしたエンジニアの工藤(雅史)さんとの相性が良かったのもあるしね。それと亀田さんの音の傾向って、わりとパリッとしてるんですけど、その辺がスピッツにもいい具合に作用したんだと思いますね。あとドラムもかなり色々チェックした。それでいい結果になってるんだと思うんですけどね

 

--スタジオに入ってからどのくらいで出来たんですか。

 3ヵ月ぐらいかな

 ある意味、すごく”らしい”アルバムになったと思う。『ハヤブサ』(前作)はどっちかというと、俺らにはこういう面もある、こういう面もあるって色々な引き出しを見せるような側面があったんですけど、今回は「ロビンソン」のイメージ、その世界を突き詰めていったようなものだから。それもかなりディープに。たぶん先行シングルの「水色の街」も、世界的には「ロビンソン」と同じようなものがあって、さらにちょっと気持ち悪さみたいなもの、不気味さみたいなもの、が加わっている。今まで書いた絵に、さらに陰影を強くつけたような作品になっていると思うんです

 

--新しいアルバムはいよいよ9月にリリースですが、特にお気に入りの曲をあげるとすれば。

 シングルでもカップリングで入ってるんだけど、「ガーベラ」って曲が、かなり俺は好きなんです。それがまたアルバムに入って、すごいいい曲になったと思うんで、「ガーベラ」はもう1回、改めて聴きなおして欲しいと思うね

 

--スピッツのようになりたいと思っているギタリスト、ヴォーカリスト達へなにかアドバイスをいただけますか。

 続けることだよね

 うん、好きなことをずっと続ける。別に難しいこと、やんなくていいと思うんで

 ちょっと思うのはね、エレキをずっと弾いてる人はアコギも弾いてみるといいと思う。またエレキに持ち替えた時すごい弾きやすいから。それでまたアコギの面白さっていうのもわかるかもしれないし。アコギっていうのはおすすめですよ

 たまに自分の演奏したのをテープにとって聴いてみるのも面白いかもしれないよ。勉強になる。弾いてるとわかんないことってあるからね。あとは、とりあえず好きな音楽を聴いて、好きなように弾けばいいと思う。難しいことやっても、やめちゃったら意味ないしね。そんなに色々なことが瞬時にわかるわけじゃないから。あと、一人でシコシコやるよりは仲間とバンド組んでやったほうが楽しいよ。人と接することが一番やっぱり楽しいと思うし、”つるんで”バンド仲間いっぱい集めて、バンドやって。そうそう、ギター買う時はネックを握ってから買ったほうがいいね。しっくりくるのがきっとあるから。何本も握って、音出してみて。自分がいいと思ったのを買えばいいと思う。同じ楽器でも手との相性みたいなのもあるし。それが長続きの秘訣かもしれないよね

 ギターは、すごい楽しい楽器なんで、好きなことを長く続けるという…

 そう、ルールはないんだよ

 指が痛くてもうやりたくないってことがあったら、とりあえずそこは飛ばしちゃっていいと思う。それしかないもん(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

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