<ドクターヘリ>
講演「信州ドクターヘリ発進」 ![]()
長野県佐久総合病院救命救急センターの岡田邦彦部長は去る9月9日、日本へリポート協会で「信州ドクターヘリ発進」と題する講演をおこない、次のように語った。
昭和20年代に医師と看護師が馬車に乗って出張診療したが、これが佐久総合病院の原点である。
ドクターヘリとは、ヘリコプターを用いて重症患者を病院へ搬送するシステムではなく、「ヘリコプターを用いて、重症患者のもとへ医師・看護師を派遣するシステム」である。これは「出張診療」であり、佐久病院の理念を継承している。
ドクターヘリの有効性は、第1に救命率が向上する。ドイツでは30年間に交通事故死が19,000人から6,000〜7,000人に減少した。またオランダでは、救急ヘリがなければ外傷患者の死亡率は17〜25%上がっていたと推定される。さらに日本のドクターヘリ試行事業の実績では、死亡率は半分になったと推定された。
ドクターヘリの第2の効用は経済効果である。一例として、東京都災害医療センターの試算では、40億円の医療費が20億円に半減するという結果が出ている。アメリカでは医療圏が拡大し、ベッド利用率、重症者受け入れの点で経営上の利点は大きいという評価がなされている。
第3に入院やリハビリ期間が短くなり、後遺症の程度も軽減する。
さらに救急システムとしては、ヘリコプターを使うことにより搬送時間が短くなり、揺れや振動が少ないため、重傷者にとって最も安全な搬送方法となる。さらに都市部でも農村部でも同じレベルの医療を受けることができる。すなわちドクターヘリは、へき地でこそ効果を発揮する。
またヘリコプターによって病院間搬送が容易になり、患者にとってはより希望にかなう医療を受ける選択肢が広がる。大規模災害時にも円滑に機能することができる。
信州ドクターヘリは今年7月から導入されたが、それまでの経緯は2003年4月、長野県における救急医療のあり方を検討する「救急医療に関する特別委員会」が発足し、信州ドクターヘリの導入を提言した。2004年9月、現時点では佐久総合病院でのドクターヘリ導入が可能との答えが県議会で出され、同12月ドクターヘリ事業の助成が決まり、3月下旬県議会で承認された。
2005年2月、院内ドクターヘリ運用委員会が発足し、具体的な準備がはじまった。5月には有識者5名を含むドクターヘリ運航委託業者選定委員会の選考を経てヘリコプターの運航事業者を決定した。
この間、2005年3月、先進事例として愛知医大と聖隷三方原病院を視察した。それ以降、両院からアドバイスを受けながら準備を進める一方、当院の13年にわたるドクターカーの救急現場活動の経験も役に立った。4月から医師、看護師はドクターヘリに同乗し実際事例を研修、医師5名、看護師7名をドクターヘリ・チームとして選任した。
ドクターヘリ開始後の出動状況は、2005年7月〜8月末までの2カ月間に現場出動32件、病院間搬送10件、キャンセル2件となった。症状は外因性28件(うち外傷22件、その他6件)、内因性14件(うち心大血管5件、脳血管3件、その他6件)。出動地域は佐久地域が25件、上田地域が16件である。
こうして佐久総合病院のドクターヘリは、発足したばかりで課題も多いが、医療の質の向上が期待できる。また救急医療部門のスタッフのモチベーションが上がったことも確かである。今後は、必要に応じて活動範囲を広げ、長野全県をカバーすると共に、群馬、山梨などの隣県にも駆けつけてゆきたいと考えている。(「日刊航空通信」、2005年9月14日付より要約)
【関連サイト】
佐久総合病院で10番目のドクターヘリ運航開始(2005.7.11)
(JSAS、2005.9.15)
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