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<日刊航空通信>

米フライトナースの現状

 11月11日、日本航空医療学会総会で米ミシガン大学病院のフライトナース、クリス・ネルソン氏により「米国フライトナースの現状」と題する講演が行なわれた。テーマは(1)フライトナースの医療範囲、(2)ヘリコプター内での医療措置、(3)メディカルクルーの人選と育成の3点で、主な内容は次のとおり。

 米国で航空医療に当たっている医療機関は500以上を数え、使用されている航空機はヘリコプターが約800機、飛行機約180機。ただし全ての医療機関が同じシステムで事業を展開しているわけではない。米国のフライトナースの特徴を一言で表現するならば、「autonomous」という単語になる。日本語では「自主的」とか「自律的」といった意味合いになろう。といっても「一人で仕事をする」という意味ではない。この仕事はチームワークなくしては語れない。


日本航空医療学会総会で講演するクリス・ネルソン氏

 この総会終了後、ネルソン氏は聖隷三方原病院を訪問、静岡県西部ドクターヘリシステムを見学し。岡田眞人ドクターヘリ・ネットワーク・ディレクターをはじめ、スタッフと意見交換をした。内容の一部は次の通り。

(1)フライトスタッフ=米国でもヘリコプター救急の初期段階では医師が搭乗していた。現在でも6%程度は医師が乗るが、多くは救急レジデントの2〜4年目くらいの医師。ミシガンでも搭乗する場合はフライトナースの指導のもとで治療を行っている。

(2)医師の仕事=ベトナム戦争で、負傷兵に対し適切な治療と迅速な搬送をすれば救命率が向上することが証明された。それを米国内で実施するには、医師の人数が確保できず、パラメディック制度がはじまり、医師は上司として各パラメディックに教育・指示・検証を行うようになった。その後ナースも資格を取れば、病院外での救急治療を担当できるように制度が改められた。これにより、それぞれのパラメディックとナースは上司としての医師のもとで教育を受け、能力が確認された時点で、医師の責任下で仕事をすることが認められている。

(3)継続的な教育=フライトナースは、一度資格を取ったからといって胃そのまま仕事を続けられるとは限らない。免許は定期的に更新しなくてはならないし、必要な資格も数年ごとに更新しなくてはならない。それらは医師によって定期的にチェックされる。このための費用はナースの自己負担である。

(4)さまざまなプログラム=ミシガン州には7つのヘリコプター救急プログラムが稼働している。それぞれに特徴があり、例えばサバイバルフライトは半分が小児で、重症な患者が多い。また9割が施設間搬送である。一方、あるプログラムは9割が救急現場への出動である。消防機関や病院は、これらの特徴を勘案したうえで、患者にもっとも適切と思われるプログラムに連絡をするようにしている。

(5)費用負担=ヘリコプター救急にかかわる経費は、原則的には自由診療なので自己負担になるが、保険などに入っていればそこからの支払いとなる。しかしフライトクルーは患者負担のことを知らされていない。それによって治療内容が変化することを避けるためである。

(6)印象的なケース=成人のARDSという肺の疾患で、ECMO治療を受けるためにフライトクルーが送り出し病院へ迎えに行った。病室で患者さんを診察し、搬送のための治療を開始したが、状態が改善しないために搬送が不可能となった。そこでECMO搬送特別チームに連絡をとり、2機目の救急ヘリにECMO外科医などが搭乗し、病院に駆けつけた。そこでECMO装置を患者に装着し、容態が改善してきたので、ミシガン大学に搬送を開始した。患者さんのヘリと増加したスタッフ用のヘリと2機同時フライトである。このようなケースが最近は増加しているそうです。

(7)フライトナースの誇り=医師と同等の知識と技術力、そして判断力など高い能力が要求され、それを実践していることが、フライトナースの誇りである。

(8)ドクターヘリ=日本のドクターヘリは予想以上にシステムが整備されており、米国との差はそんなに大きくないと感じた。((「日刊航空通信」2006年11月15日付と12月11日付より要約) 


ミシガン大学病院のヘリコプター救急プログラム「サバイバル・フライト」 はベル430双発ヘリコプター3機を使用、アンアーバーのミシガン大学に2機、リビングストン・カウンティ空港に1機が待機し、24時間いつでも出動できる態勢をとっている。年間出動件数は2ヵ所で1,400件。20年前に運航を始めて以来、25,000件の出動をして、事故は皆無。

(JSAS、2006.12.12)

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