<河北新報・社説>
ドクターヘリ導入のすすめ 救急医療の専門医を乗せて患者のいる現場へ急行する「ドクターヘリ」を、福島県が新年度、東北で初めて導入する。
ドクターヘリは現在、千葉県や長野県、北海道など11ヵ所で飛んでいる。広大な医療圏をかかえる過疎地で特に救命率向上に威力を発揮するとされ、東北は真っ先に導入に手を挙げてよさそうだが、経費などの問題から進んでいないのが実情だ。福島県の取組みを契機に、各県が積極的に導入をはかるよう期待したい。
ドクターヘリは来年1月、福島県立医大病院に配備される。実際の運用は、県がヘリの機材とパイロットを抱える専門のヘリコプター運航会社に委託する。県は、ヘリが駐機できる格納庫やヘリポートなどを、1億3,800万円かけて医大病院に整備する。運航会社への委託料など運用にかかる費用は年間1億7,000万円で、国と県が半分ずつを負担する仕組みだ。
実際の運用は、ヘリコプターで(1)医師を派遣し、その場で治療に当たる、(2)治療の終わった患者を乗せて素早く医大病院に引き返す、(3)患者を別の病院に搬送する――などの使い方が想定される。 福島県内では、救急車による搬送時間が1時間を大きく超えることもあるが、ドクターヘリを使えば30分程度に短縮できるという。
福島県保健福祉部は「現状では患者を搬送するのに時間がかかる。現場に行って治療できる点でも効果は大きい」と導入の理由を説明する。
消防庁の全国統計によると、年間に救急車で運ばれている人のうち約4割は搬送に30分以上かかり、約26%は1時間以上かかっている。
特に心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞では、発症後1〜2時間で治療するかどうかが生死を分けることになり、搬送時間の短縮は各地で大きな課題になっている。ドクターヘリの普及を目指すNPO法人HEM-Net(救急ヘリ病院ネットワーク)によると、ドクターヘリの普及により、国内では死者を27%、重度後遺症患者を45%減らせるという。
ドクターヘリは、米国やドイツ、スイスなど欧米諸国で救急医療現場に定着し、「15分以内の治療開始」などが既に実践されている。先進各国ではヘリコプターの運航費用を健康保険や寄付金で賄うルールが確立しており、日本にとって見習うべき点は多い。
福島県などの新たな動きもあるが、国内ではドクターヘリ導入のテンポが速まる気配はない。経費面の問題以外にも、ヘリの有効性、必要性に関する国民的な認識の低さなども導入を妨げているとみられ、早めに住民の合意形成に取り組む必要を痛感する。 (河北新報社説、2007年03月25日付けより要約)
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