<日刊航空通信>
ドクターヘリ特別法に関する質問と答弁 前原民主党副代表は、先に成立した「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」について、7月3日付で「救急医療用ヘリコプターの財源等に関する質問主意書」を提出した。これに対し、安倍総理名で河野衆議院議長あて答弁書が送付された。質問と答弁の主な内容は次のとおり。
質問1 厚生労働省によるドクターヘリ事業は、2001年から同省特別枠の5ヵ年計画「メディカル・フロンティア戦略」の一つとして位置づけられていたが、どの程度の規模を考えておられたのか。また、この戦略の進捗状況は如何か。
答弁1 ご指摘の「メディカル・フロンティア戦略」に基づき、旧厚生省では、脳卒中や心筋梗塞を早期に治療開始するとともに、救命救急センター等へ迅速に搬送するため、ドクターヘリの導入を図ることとし、平成17年度までに10ヵ所の救急救命センターにドクターヘリを配備した。また平成12年9月、旧内閣官房内閣内政審議室が設置した「ドクターヘリ調査検討委員会」に旧厚生省が提出した資料においては、平成13年度から平成17年度までに全国30ヵ所にドクターヘリを配備するという目安を示した。
質問2 ドクターヘリの配備される医療機関については、第三次医療機関とし、厚生労働省が指定するものではなく、各都道府県からの要請によって実行するものではないか。
答弁2 お尋ねの内容が定かではないが、ドクターヘリ導入促進事業(以下「事業」という)については、事業を実施しようとする都道府県が、第3次救急医療機関である救命救急センターの中から選定した適切な医療機関に対し、ドクターヘリの運航等を要請した上で行うものである。
質問3 6年が経過した今日、初めて「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」が制定された。この法文にある「救急医療用ヘリコプター」とは、第2条にある「救急医療に必要な機器および医薬品を搭載し、病院の敷地内もしくは当該病院の医師が直ちに搭乗できる場所に配慮すること」とあるため、これは救助や消火など多目的に使用される全国に71機配備されている消防防災ヘリコプターは現状では対象外であり、「ドクターヘリ」のみを指すことになるものではないのか。
答弁3 ご指摘の救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(平成19年法律第103号。以下「法」という)は議員立法によるものだが、平成19年6月15日の衆議院厚生労働委員会における法案提出者の答弁においては、消防機関等が保有している消防災害用のヘリコプターについては、法の対象外である旨の説明がなされている。
質問4 次に、この法文の附則に「施行後3年を目途として診療に要する費用の負担の在り方を勘案し、所要の措置を講ずる」とあるが、これは国民負担を前提としているのか。そうである場合、国民に選択の余地はあるのか。
答弁4 法附則第2項においては「この法律の施行後3年を目途として、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の提供の効果、救急医療の提供に要する費用の負担の在り方を等を勘案し、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の提供に要する費用のうち診療に要するものについて、健康保険法、労働者災害補償保険法その他の医療に関する給付について定める法令の規定に基づく支払について検討を行い、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」こととされており、お尋ねの点については同項の規定に基づき、今後検討を行うこととしていることから、現時点でお答えすることは困難である。
質問5 この特別措置法の施行について。阪神淡路大震災での経験から「プリベンタル・デス」(防ぎ得た死)をなくすことと医療格差等の是正を目的として始まったドクターヘリが、現在まだ10道県11ヵ所でしか行われていない原因は何か。また、このたびの法制化で、どのような長期的計画のもとに、財源についてはどのように考えているのか明確にお示しいただきたい。
答弁5 お尋ねのドクターヘリが現在までに10道県にしか導入されていない原因については、都道府県の負担が高額である等の理由から、都道府県において事業の実施に至らなかったことが考えられる。また財源については、法第8条第2項において、国の都道府県に対する補助に関する規定が設けられたところであり、今後とも必要な予算の確保に努めてまいりたい。
質問6 次に、すでに消防防災ヘリは全国に71機が配備され、年々出動件数が増加し、平成17年の統計によると、出動した災害活動件数のうち、救急事案が2,492件となっている。特に、山岳地や高速道路などにおける多重事故などの際には、ドクターヘリとは異なって、救助隊員がヘリから降下し、負傷者を機体に装備されているホイストによって機内に収容し、直ちに医療機関に搬送する、ということを消防防災ヘリで行っている。つまり、救急の前に救助を行う、というのがドクターヘリとの違いで、ドクターヘリが今後増えた場合、この消防防災ヘリとの役割分担が極めて重要な課題となるわけで、この点について厚生労働省と総務省消防庁はどのような見解か。
答弁6 総務省消防庁および厚生労働省としては、消防防災ヘリは、消火、救助、救急、情報収集等の消防防災業務全般にわたる活動を行うものである。他方、ドクターヘリは、医師が直ちに搭乗し、速やかに傷病者の現在する場所に行き、必要な処置を行うものであることから、消防防災ヘリはドクターヘリに比べ、医師による処置が相対的に遅れる点はあるものの、アクセスが困難な場所における救助等において有用であると考えている。なお、ドクターヘリを用いた救急医療の確保に当たっては、法第3条第2項第1号に基づき、地域の実情に応じ、消防機関、海上保安庁その他の関係機関との連携が図られるものと考える。
質問7 次にドクターヘリの財源に関して、現在は補助事業だが、この法律によって、今後実施数が増えていった場合に、この事業が存続できるか。つまり、都道府県や国民に負担が回される可能性は如何。約1億7千万円の使途については、すべてドクターヘリのために使われ、かつ監査も当然行われていると思うが如何。
答弁7 お尋ねの財源については、法第8条第2項において、国の都道府県に対する補助に関する規定が設けられたところであり、今後とも必要な予算の確保に努めてまいりたい。また、事業に係る補助金については、厚生労働省および各都道府県において、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)に基づき、交付の決定、額の確保、実績報告等の事務を適切に行っている。
質問8 現在の事業補助の中から医療機関にも2,800万円が支払われているが、その目的は何か。現在事業が行われている11ヵ所については、搭載する救急用資器材についての負担が医療機関であったりヘリ事業会社であったりと、基準が不明確であるが、厚生労働省の見解は如何。また、搭載する資器材の保守管理までを、医療については素人であるヘリ事業会社に任せているとのことだが、その責任体制についてはどのような見解か。
答弁8 ご指摘の2,800万円の支払いについては、何を指すのか明らかでないので、お答えすることは困難。また、お尋ねのドクターヘリに搭載する救急医療に必要な医療機器に係る費用負担ならびに保守および管理に関する責任分担については、事業を実施する都道府県において適切に判断されるべきものと考えている。
質問9 当初スタート時点では、事業会社が購入して修理改造を行ったドクターヘリは、年間出動250回と想定して事業費を算出したものだが、6年後の現在では平均して480回、多いところでは650回弱、つまり倍の出動となっている。現在全てを輸入機に頼っているヘリ事業会社は、機体価格の上昇と、燃料費の高騰に苦しんでいる。しかし「人命を救う」という崇高な目的使命のために日夜努力されており、スタート当時と比較すると、ある機種については機体価格が倍になっている。加えて為替で極端な円安という問題も重なり、保険料、利息、税金の大幅上昇という形で跳ね返って、このままではドクターヘリ事業そのものが危ういという状況となっており今後の対応は如何。
質問10 ヘリコプター業界では近年、ベテラン・パイロット、整備士等の大量退職、また若手育成等で今後の課題が山積している。若手育成のために法制化を機に、1ヵ所あたり1億7千万円という数字を、事業会社等の実態調査をした上で、金額の見直しをする必要があるのではないか。厚生労働省の見解は如何。ヘリコプターは、航空機の特性として空中停止ができ、人命救助においては大活躍されており、大災害時、例えば新潟県中越地震においても、自衛隊は大量の食糧、飲料、衣料を滑走路もない山間地に直ちに空輸したほか、各地から集まった消防防災ヘリ、同じく広域応援にかけつけた警察ヘリなどが、多くの孤立した人達を救助し、負傷者や急病人を医療機関に搬送したりと、その活躍は目覚ましい。国が自ら率先して価格の安いヘリコプターを開発し、低コスト化が実現できると思う。また、安全運航を保障する機器の開発、また天候不良時など安全運航が可能となるような規制緩和が行われれば、同様に低コスト化につながる。わが国におけるヘリコプターの有効活用をさらに進めるためには国は本格的な取り組みが必要と思うが見解は如何。
答弁9および10 現行の事業に係る1ヵ所あたり約1億7千万円の補助額は、機体の減価償却費、運航に係る人件費、燃油費等を勘案して算出したものであり、これらの費用等の状況に応じて、今後、適宜見直していく必要があると考えている。政府においては、今後とも、運航の安全性を確保しつつ、必要に応じ、ヘリコプターの活用に資する対策に取り組んでまいりたい。
(日刊航空通信2007年9月4〜5日付/株式会社タクトワン協力より要約)
(JSAS,2007.9.8)
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