<日本航空医療学会総会>
第14回日本航空医療学会総会は日本医科大学千葉北総病院の益子邦洋救命救急センター長を会長として11月30日と12月1日の両日、幕張メッセ国際会議場で開催された。開会にあたって益子会長は「航空機を活用した救急活動は、航空、救急救助、医療など、さまざまな分野の緊密な連携があって初めて、大きな効果を発揮することはいうまでもない。そこで今回は『救助と医療のコラボレーション』をメインテーマとしたところ、全国から128題の演題応募を頂いた。去る6月には『救急ヘリコプター特別措置法』も成立、記念すべき年となった。この歴史的ともいえる航空医療体制の一大変革期にあたって、2日間の総会から航空医療の新しい情報を全国に発信したい」と述べた。
今回は新法の成立もあって、救急医療の広い分野からの参加とともに海外からの招待講演も多く、盛大な学術集会となった。中でも日本航空医療学会小濱啓次理事長の特別講演「国民にとって最もよい救急医療体制を再構築し救急庁の設置を考えよう」、軍事アナリスト小川和久氏の特別発言「ドクターヘリによる一点突破全面展開論」、全米航空医療学会(AAMS)サンディ・キンケード会長を囲んでの「日米フライトナース座談会」、5大ヘリコプターメーカーの競演となった国際シンポジウム「世界のヘリコプター救急と航空機」などが注目を集めた。また国際会議場入り口には朝日航洋のドクターヘリMD902が展示された。
幕張国際会議場前に展示されたドクターヘリ以下、総会でおこなわれたさまざまな講演、シンポジウム、研究発表などの中から、小濱理事長の特別講演「救急医療用ヘリコプターの法制化と新しい救急医療体制の構築」の要旨をご紹介する。
特別措置法で変わることは、都道府県の医療計画の中に救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)が入ることによって、医師と看護師の搭乗した救急専用ヘリコプターが全国をカバーするようになる。もう一つは、医師と看護師がヘリコプターで現場に飛ぶことにより、今まで病院前の救急業務として現場で救急隊員が行っていた救急処置に治療が加わるようになる。すなわち医療が法律として病院前のシステムに参加することになる。
そこで、これからの救急医療体制は、これまでの市町村消防という細切れ体制から都道府県単位の広域体制へ改める必要がある。特に重症疾患(三次救急疾患)については、都道府県単位の指令センターが必要となる。この指令センターには、適切な判断をするために医師もしくは救急救命士が勤務し、救急車、ドクターカー、ドクターヘリの出動依頼を判定しなければならない。都道府県の指令センターの費用については、民間救急の導入によって必要経費が減少した費用で運用すべきと考える。
また三次救急医療を全国民に均等に24時間サービスするためには、ドクターヘリも24時間体制で運航されなければならない。そのためには全国各地に夜間照明つきのヘリポートを設置する必要がある。このヘリポートを旧町村に少なくとも1ヵ所設置することによって全国均等な三次救急医療の提供が可能となる。
新法第8条では、国と都道府県がヘリコプター運航費の一部を補助することになっているが、財源不足の自治体もあるため第9条で一般から寄付を募り、助成金を交付する公益法人を設置することになっている。接地の時期は法律の公布後1年を目途とするという附則がある。この寄付金の出所は自賠責保険、労災保険、健康保険、損保協会、自動車工業会、JA共済組合、JAF等が関係してくると思われる。健康保険に関しては、附則において法律の施行後3年を目途として検討することになっているが、日本医師会は健康保険の適用に強く反対している。このあたりの考え方を何とか改めて貰いたい。
現実問題として、救急患者の病院到達時間は年々延びる傾向にあり、30分以上を要する件数は平成11年が年間約120万人(約31%)だったのに対し、平成17年には年間約216万人(約44%)まで増えた。とりわけ驚くべきは東京都で、医療過疎といわれる北海道、岩手、高知よりもさらに時間を要し、平成17年には平均43.2分も要していた。このように長時間を要している原因には、救急救命士の業務の拡大、管外搬送の増加、転送の増加、救急医療機関の減少、交通渋滞などが関与しているものと思われるが、真の原因は何か、それを改善するためには何が必要かを早急に検討し、対策を講じてゆく必要がある。
福田内閣総理大臣は施政方針演説の中で、救急医療の改革をうたい、桝添厚生労働大臣は小児救急や周産期医療の問題でドクターヘリの導入が必要であると発言している。また、政府与党の合意事項の中には、救急医療体制の拡充とドクターヘリの展開が含まれている。今こそ救急医療改革が可能な時である。市町村消防から都道府県消防へ、国民にとって最も良い救急医療体制の構築を考えることが必要である。
ドクターヘリの法制化は、救急医療改革の糸口をつくったといえる。私はこの際一気に「救急法」を作り、厚生労働省管轄の救急医療、総務省消防庁の救急業務、内閣府の防災、危機管理室のテロ対策などをまとめた救急庁の設立を提案する。傷病者(国民)の立場からすると自分の病気を治して欲しいのであり、医療を中心にして医療と救急業務を一体化することが基本であると考える。救急隊員の実務実習は救急医療の現場で医師と看護師と共に行うべきであり、消防機関による救命救急センターでのワークステーションの配備と高規格救急車によるドクターカーの運行を提案したい。この救急医療と救急業務のコラボレーションをどうするかを公的に早急に検討すべきと考える。
おわりに、救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)が国の法律によって定められたことは、救急医療体制を改革するまたとないチャンスである。救急医療関係者が、傷病者(患者)の救命にとって、どのようなシステムが最良であるかを考えて対応していくことが重要と考える。(日刊航空通信、2007年12月4〜5日付より要約)
(JSAS、2007.12.5)
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