<岐阜新聞>
ドクターヘリ――救命に欠かせぬ存在 「心肺停止時は適切な処置をすぐ始めないと、救命率が1分ごとに10%低下する」。岐阜大学医学部付属病院の高次救命治療センター長・小倉真治教授は、救急医療の充実に「ドクターヘリは欠かせない」と強調する。
昨年5月、飛騨市神岡町で起きたトラックとタンクローリーの衝突事故。トラックの男性運転手が胸部を圧迫され呼吸困難に陥った。午前8時30分、救急隊から県防災ヘリに出動要請。ヘリが岐阜大病院で医師を乗せた上、現地に同9時30分に到着した。点滴の処置を施し、病院へ搬送して緊急手術、男性は一命を取りとめた。
岐阜県の防災ヘリは現在2機。各務原市の防災航空センターに常駐しており、救急時には「ドクターヘリ的運航」を行う。各地の救急隊から出動要請があれば、岐阜大付属病院の屋上ヘリポートへ向かい、救急専門医を乗せて現場に向かう仕組みだ。防災ヘリの有効活用として定着してきたが、病院に常駐する真のドクターヘリを持たない県内の体制は不十分だと小倉医師は言う。「いわばドクターヘリは救急車で、防災ヘリは消防車。今のやり方では、医師を迎えに来る時間のロスもあり、救命率はそれほど高くならない」。
防災ヘリには、心電図モニターやAED(自動体外式除細動器)は搭載されているが、救急専門医としては「心もとない」。救急医療に特化したドクターヘリなら、人工呼吸器や自動心臓マッサージ機の常備も可能だ。聖隷三方原病院のドクターヘリ事業に勤務した経験のある豊田泉同センター准教授も「ドクターヘリの目的は、医師が事故現場に急行して処置を始めること」という。
2006年度の県防災ヘリのドクターヘリ的運航は63件。年々増えており、防災航空センターも「各地の消防に、救急時にはヘリを呼ぶという意識が広がりつつある」と話すが、速やかな初期処置が必要な「救急現場へ急行したのは5%程度」(小倉医師)にとどまる。愛知医科大病院のドクターヘリは2006年度現場出動件数が344件で、ほぼ毎日出動する勘定。「需要があるから配備するのではなく、配備することで出動要請が増える」と医師側は見ている。
岐阜県医療整備課は、ドクターヘリの配備へ向けて「前向きに考えているが、運営コストなどクリアすることは多い」と、2億円近いとされる年間経費の財源確保がネックと考えている(半額は国が負担)。出動件数が増えれば、病院周辺の騒音など近隣住民の理解も必要になる。
現在ドクターヘリは全国12ヵ所の病院を拠点に飛んでいる。月内には大阪と福島でも始まる。小倉医師は「県防災ヘリとドクターヘリが共生すればいい。今の方式を基にして、ドクターヘリが加われば、もっと多くの命が助かるはず」と語る。
古田肇知事は4日、定例会見で「新たに救急用ヘリを運用する手法のコストメリットを検討する必要がある」と述べ、新年度当初予算案にドクターヘリの調査費を盛り込む方針を明らかにした。ヘリポートの設置基準や必要な機材、運用の要件などを調査した上で、導入の是非を判断する。
これは、県内の医療格差の是正や搬送時間の短縮などの観点から、導入の是非を検討する必要があるというもので、調査費として300〜400万円を見込んでおり、古田知事は「ドクターヘリ自体、私は良いと思っている。国の動向も含め、どこに配備するのか、経費はどれだけ必要かなど、いろんな観点で考えており、調査期間が必要」と語った。
(岐阜新聞、2008年1月5日付けより要約)
(JSAS,2008.1.9)
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