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<沖縄タイムス社説>

救急ヘリ再開へ知恵を絞りたい

 救えるはずの命が救えない。住む場所によって命に軽重があってはならないのはいうまでもない。だが、命の格差が生まれかねない現実が沖縄県内で出ている。

 救急ヘリコプターを運航していたNPO法人「MESHサポート」設立準備委員会が、継続的に運航するのに必要な資金が確保できないとして一時運休を決めた問題である。なおMESHはヘリコプターによる医療救援サービス(Medical Evacuation Service with Helicopter)の英文頭文字を略したもの。

 沖縄北部の市町村にとって救急ヘリは文字通り「命綱」といっていい。都会と違い、病院が少ない上に、遠い。

 なぜ運休に追い込まれたか。一言でいえば資金難だ。機体の賃貸やパイロットの確保で、維持費は年間約八千万円かかる。国や県、市町村からの補助は一切なく、純粋に民間ベースの取り組みである。

 事業をスタートさせた北部地区医師会病院が財政難にもかかわらず、2年間の救急ヘリの試行に踏み切ったのは、「救える命を救いたい」という医療従事者としての使命感からといっても過言でないだろう。財政的裏付けが十分でなく、北部地区医師会病院から引き継いだMESHサポートの運休はある程度予想されたことではあった。

 医療過疎の地域では、一分一秒が救命に直結する。命の格差を認めてはならない。そのため私たちも手をこまぬいてはならない。できることから始め、再開につなげたい。

 MESHサポートは、すでにスイス航空救助隊REGAをモデルに個人千円、企業十二万円の会員を募っている。その結果、7月25日現在、会員数は約千人、総額約八百万円が寄せられた。

 再開するには、もっともっと個人・企業会員を増やさなければならない。

 もう一つ提言したいのは、会員を増やすと同時に、「ふるさと納税」制度を利用できないかということだ。国内各地でそれぞれの出身者によるふるさとへの寄付が徐々に目立つようになってきた。その一部を市町村が補助金として救急ヘリの運営資金に回せないものか。

 救急ヘリを利用する人は、北部以外の中・南部、観光客らの「疾病者」が3割近く占めるという。北部だけの問題ではないということだ。

 もちろん、国、県、市町村の支援も欠かせない。県は国のドクターヘリ導入の実施主体を浦添総合病院とする方針を固めているが、それだけでは北部への対応が手薄になるのは目に見えている。

 厚生労働省には、画一的な基準をあらためて地域の実情にあった柔軟な適用を求めたい。過疎地や離島を多くかかえる沖縄の事情を考慮すれば、2機体制によるすみ分けをはかるのが現実的だ。(沖縄タイムス、2008年7月26日付より要約)

北部ヘリコプター出動実績

 北部地区医師会病院の小濱正博副院長によると、2007年6月16日から2008年7月15日までの1年1ヵ月間の救急ヘリコプター出動実績は、次のとおりであった。

  1. 出動件数:234件(うち現場出動143件、転院搬送70件、途中キャンセル16件、巡回診療5件)
  2. 診療患者数:218名(平均年齢56.6歳)
  3. 搬送者居住地:沖縄本島北部119人(53%)、北部離島46人(21%)、中部19人、南部16人、県外21人
  4. 症例;交通外傷27、頭部外傷7、熱傷5、労災事故11(CPA1)、溺水12(CPA4)、脊椎損傷6、潜水病11、スポーツ外傷5(CPA1)。呼吸器疾患18、熱中症8、心血管疾患25、脳血管障害33、痙攣疾患11(以下略)
  5. 出動要請地域:国頭村89、伊江村35、名護市32、本部町20、東村16、伊是名村11(以下略)(日刊航空通信、2008年8月7日付より要約)


中日本航空が運航するMESHドクターヘリAS355

(JSAS,2008.8.10)

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