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暴力推薦図書(毒書案内)
第一回 花村萬月「笑う山崎」(94年 祥伝社)

 タイトルがいい。この「山崎」というのは何者かというと、ヤクザ者です。しかも男意気や腕力ではなく、徹底的な残酷さ故に恐れられている。最初から最後まで「山崎」という苗字のみで話が進んでいく(名前は出てこない)のも、記号的で不気味である。最も凄まじいエピソードは自分を狙ったはねっかえりのヤクザに対する仕打ちで、このヤクザは山崎のタマを取り損ねたためいつ復讐されるか気が気でないので、不安をごまかすためについ覚醒剤に手を出してしまう。結局彼は捉えられ「男として」死のうと決意するが、薬が切れたため錯乱状態をひきおこし自分の指を食いちぎってしまう。それを見た山崎、何をするかというと、彼に食事をあたえ女をあたえシャブを「抜き」、一人の人間として完全に体力を回復させてやる。さて、山崎はこの男に情けをかけてやったわけではない。シャブ中でボロボロの体のまま、夢うつつの状態で殺してしまっては甘いのだ。すべては気力体力を回復させて、生きる希望が頭をもたげ始めた彼を一晩かけてなぶり殺しにするための処置なのである。で、このあわれなヒットマンの死体が(見せしめとして)発見されるのだが、その状態というのが体中穴だらけ、性器は切り取られ、体中の皮膚ははがされ、指紋もな
く、顔はほとんどのっぺらぼうというのだからその拷問の凄まじさは推して知るべし。しかし、再婚したフィリピーナとその連れ子に対しては過剰に優しく、舎弟や兄弟分からの信頼は厚い。「あなたはどう接していいのかわからないと、殺してしまう」と言いたれるフィリピン妻の言葉には笑ってしまいましたが。「愛と暴力」がこの作家のテーマだとするなら
ば、「皆月」はちょっとおセンチすぎるし、「ぢん・ぢん・ぢん」は冗長すぎる(途中で放棄)。というわけでハードコアなこの作品がおすすめ(といってもこの3冊しか読んでませんが)。もし三池崇あたりが映像化するならば「殺し屋1」なみのバイオレンスな作品になりそうな気がする。この「山崎」、無表情のままとんでもなく残酷なことをするので、演じさせるとするならば大杉連・長塚京三・ビートたけしあたりも当然アリだが、優男で色白で刺青も背負っていない極道というところで、いっそリリー・フランキー氏あたりはどうか。あの人の虚無的な目はこの役にビンゴなのではないかなあ、と思った。

当サイトは古本屋のくせに本について語る場所がないことに気づき、急遽このコーナーをでっちあげました。「暴力温泉芸者」とは、多分関係ありません。

(2003.4.12) 

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